相談

 3年前に夫と結婚しましたが、共働きということもあり、徐々にすれ違いが生じ、この度、子供を連れて別居することになりました。そこで、自分が勤務している会社に家族手当の支給を申請したところ、担当者に「夫婦のいずれか収入が多い方を世帯主と判断して、その世帯主のみに家族手当を支給する決まりになっている」と言われ、断られてしまいました。

 別居後は、住民票を移しましたので、住民票上の「世帯主」は私になっています。どうにかならないのでしょうか?

回答

1 原則として企業の自由

 家族手当など諸手当の受給要件やその内容については、各企業の規定するところによります。よって、「世帯主に家族手当を支給する」という規定がある場合に、「世帯主」をどのような基準で判断するのかという点についても、原則として、各企業が自由に取り決めることができます。

 もちろん、「自由に」とはいえ、その判断基準が不合理であったり、男女「差別」をするようなものであったりする場合には、そのような規定は無効になる余地がありますが、『夫婦のいずれか収入の多い一方を「世帯主」として扱い、この者に家族手当を支給する』という規定について、一定の合理性があり、労働基準法に違反せず有効であると判断した裁判例もあります。

2 本件の回答

(1)本件でも、「夫婦のいずれか収入が多い方を世帯主と判断して、その世帯主に家族手当を支給する決まりになっている」とのことですので、夫の方が相談者より収入が多いという状況であれば、勤務先の規定上、残念ながら相談者に家族手当の受給資格はないということになります。

(2)しかし、例えば、別居が長期間に及び「実質的に離婚している」といえるような状況に至った場合には、その旨を主張して会社に柔軟な対応を求める方法や、「夫婦のいずれが収入の多い方」という一見中立的な基準により家族手当の受給資格者を判断している場合でも、『結果として男女間で差別的効力をもたらす基準等は「間接差別」として無効である』という考え方もありますので、そのような考え方に基づいて、勤務先に対して、規定の(一部)無効を主張して、家族手当を請求するという方法もあり得るので、検討すべきでしょう。

弁護士 細田大貴