1 子の引き渡しを求めるためにとりうる手続について

 別居中の夫婦の一方が子どもを連れ去ってしまう場合があります。このような場合、もう一方の配偶者としては、一刻も早く子どもの引き渡しを求めたいと思われることでしょう。
 子どもの引き渡しを求める方法としては、⑴子の引き渡し・子の監護者指定の審判の申立てをする方法と(同時に、保全処分として、子の仮の引き渡し・子の監護者の仮の指定を求めることもできます)、⑵人身保護請求による方法が挙げられます。一般的には⑴の手続が先に行われ、相手方が⑴の審判の結果にも従おうとせず、子どもを引き渡さない状態が継続しているような場合のみ、⑵の方法がとられています。
 以下、⑴の方法について解説します。

①子の引き渡しの審判の申立て

 別居中の夫婦の一方が子どもを連れ去ってしまった場合には、どちらの夫婦も子どもに対する思い入れが強いため、多くのケースでは、調停で話し合ったとしても合意できる可能性は低いと言えます。このような場合まで、まずは調停で話しあってから審判を行うとすると時間の無駄になってしまうので、子の引き渡しに関しては、調停を介さず、いきなり審判を申し立てることが多く行われています。

②子の監護者指定の審判の申立て

 子の引き渡しの審判を求めるということは、子どもを引き渡しなさいと相手方に命じることを裁判所に求めるということです。これは、“子どもと一緒に住むべき親は、相手方ではなく自分である”ということを、裁判所に認めてもらうということですから、子の引き渡しの審判を申し立てる場合の多くのケースでは、子の監護者指定の審判も同時に申し立てています。