1 退職金は分与対象財産になるか
退職金は、賃金の後払い的性質を有するとされ、清算的財産分与の対象となりうることについては、実務上争いがありません。
もっとも、退職金は将来支給されるものであるため、本人の事情(死亡、病気、懲戒解雇、早期退職等)や勤務先の事情(経営不振による倒産・退職金の減額、就業規則の変更等)などの不確定要素により、変動する可能性があります。
実務上は、このような退職金の性質を考慮して、「支給の蓋然性」が認められるときには退職金を清算的財産分与の対象とし、認められない場合には清算的財産分与の対象とはせず、扶養的財産分与の考慮事由にとどめる傾向があります。
2 支給の蓋然性とは
どのような場合に支給の蓋然性が認められるかは、ケースバイケースであり個々の事案によらざるを得ませんが、これまでの勤務年数、定年までの年数、勤務先の規模・経営状況などの様々な事情を考慮して判断することになるでしょう。
例えば、経営状況が芳しくない中小企業に勤務しており、定年も10年以上先ということであれば、支給の蓋然性が認められないと判断される場合もありますし、公務員や大企業の社員であれば、定年が10年以上先であっても、支給の蓋然性が認められる場合もあり得るでしょう。