前回、慰謝料請求のお話をしました。
 慰謝料と並んで、離婚の際の金銭的問題として浮上することが多いのが財産分与です。

 民法768条1項(及び771条)は、「離婚をした者の一方は、相手方に対して財産分与を請求することができる」と規定しています。

 しかし、法は、どのようにして財産分与の内容、すなわち金額などが定まるかについてまでも具体的に定めるものではありません。ただ単に、家庭裁判所は、「当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める」とするのみです。

 では、財産分与はどのようにして決まっていくのでしょうか。

 まずは当事者間の協議です。協議により合意ができるなら、合意により請求権が定まります。但し、相手方の履行に不安があるようなら、公正証書等を作成しておく必要があるかもしれません。協議により合意が得られないなら、協議に代わる処分を家庭裁判所に求めることができます。あるいは、調停を申し立てることもできます(家事事件手続法244条)。
さらに、離婚訴訟が提起された場合には、それにあわせて財産分与を申し立てることもでき(人事訴訟法32条)、この場合には、判決の中で家庭裁判所の判断が示されることになります。

 財産分与には、3つの要素が含まれるといわれます。
それは、①婚姻中の夫婦の実質的共同財産の清算、②離婚後の扶養、③慰謝料です。

 本来、民法の財産分与の規定は離婚後の扶養を主目的とするはずのものでした。しかし、実際の規定は清算的内容を中心とする言葉になっています。民法の定めの上では、夫婦の財産は、「別産」が原則とされています。「婚姻中自己の名で得た財産」もそれぞれの財産とされ、ただ「夫婦のいずれに属するか明らかでない財産」について共有が推定されるのみです。

 しかし、離婚に際しての財産分与の実務においては、婚姻前のそれぞれの財産及び別居後にそれぞれが得た財産を除くすべての財産を原則として2分の1として分割する方法がとられています。対象にも制限はなく、動産、不動産、金銭、預貯金債権、年金受給権等が分割の対象となります。

 これに、慰謝料的要素や将来の扶養などの要素を加味して、実際の分与額が決定されます。

 ただ、実際には、配偶者の一方が婚姻中の財産を管理している等で、他方配偶者が世帯の財産を把握していない事態も多くみられます。
 このような場合に備えて、離婚を決意された方は、別居の前に財産を調査しておくことをお勧めします。

 そのあたりも踏まえて、疑問点等おありの方は、弁護士法人ALG&Associatesまでご相談ください。