今回は、判例の紹介をしたいと思います。

 紹介する判例は、損害保険金が財産分与の対象となるかについて判示した判例をご紹介したいと思います。

 事案の概要は以下のとおりです。

 妻と夫は、平成6年に婚姻し、妻と夫の間には、長男と夫の連れ子がいました。妻は、家事・育児をほとんど一人で行っていました。

 平成12年になり、夫は交通事故により受傷し、保険会社から休業損害を受け取っていました。

 平成15年になり、夫は、加害者、保険会社の間で既に支払われた金銭以外で、5200万円を受領することで和解しました。5200万円の内訳としては、
① 逸失利益が約4647万円
② 未払傷害慰謝料が約149万円
③ 後遺症慰謝料が約460万円
で、和解に伴い多少の減額があったようです。

 その後、同年4月に、夫は離婚調停を申し立て、長男の親権者を妻とすること、養育費を支払うことなどを内容として調停が成立したのですが、財産分与については合意が成立しませんでした。

 そこで、妻は財産分与の審判の申立てを行い、上記5200万円の2分の1である2600万円の支払いを求めました。

 これに対し、裁判所は、原傷害慰謝料や後遺障害慰謝料に対応する部分は、事故により被った精神的苦痛を慰謝するためのもので、妻が取得に寄与したものではないから特有財産であるとしました。しかし、逸失利益については、後遺障害がなかったとしたら得られたはずの労働の対価を算出して現在の額に引き直したものであるため、上記期間中には配偶者の寄与がある以上、財産分与の対象となるとしました。

 もっとも、その対象範囲は、いわゆる症状固定時から離婚調停が成立した日の前日までの間の日数に応じて財産分与の対象となるとし、最終的には154万円を妻に取得することが相当であると判示しました。

 一見すると交通事故の損害賠償金については、夫婦の共有財産ではないと思われる方も多いかと思いますが、上記のように事案によっては財産分与の対象となることがありますので、お気軽に弊所までご問い合わせ下さい。