③子の仮の引き渡し・子の監護者の仮の指定の申立て

 審判事件は、裁判所が判断をする手続であり、審問(裁判所が直接当事者から事情聴取することです)期日を設ける等して手続が進められますから、審判を申し立ててから審判が出るまでに一定の時間を要することになります。そのため、裁判所の審判を待てないような事情があるときには、裁判所に暫定的に子の監護者を指定し、子の引き渡しを命じてもらいます。このような措置を求めるのが保全処分です。

 この保全処分は、子どもの福祉が害されている状況を一刻も早く把握し、監護権等に関する審判を待たずに、速やかに、子どもを他方配偶者のもとに引き渡す処分ですので、これが認められるだけの高度な必要性を主張していかねばなりません。具体的には、虐待や監護養育の放棄(ネグレクト)等が行われていたり、相手方の監護の不適切が原因で子どもが発達遅滞や情緒不安を起こしていたりする場合等です。裁判所が審理した結果、現在の監護者の下における監護養育に問題がない事案や、保全処分の必要性等がない事案では、裁判所から申立人に対して取下げ勧告がなされることもあります。

2 申し立てる裁判所、手数料について

 子の監護者の指定及び子の引き渡しの審判の申立ては、いずれも、子(父又は母を同じくする数人の子がいるときは、そのうちの1人の子)の住所地を管轄する家庭裁判所、又は当事者が合意した家庭裁判所で行います。
 審判の手数料は、子の引き渡し及び子の監護者の指定のそれぞれについて、子1人当たり1200円です。
 保全処分の手数料は申立て1件につき1000円です。申立書1通につき1件とするため、1通で子の監護者の指定及び子の引き渡しの保全処分を申し立てても、複数の子の保全処分を申し立てても1000円です。

3 最後に

 子の引き渡し及び子の監護者の指定の審判、保全処分等は、速やかに申し立てないと不利になる場合もあり、また、審理が迅速に進むため、数えきれない事実の中から必要かつ有効な事実を速やかにピックアップして審問に臨み、必要に応じて主張書面や資料も提出しなければなりません。お手伝いできることも多いかと存じます。お一人でお悩みにならず、是非一度、ご相談頂ければと思います。