今回は、婚姻費用の算定に際して、義務者に高額な相続財産があった場合に、当該相続財産を義務者の収入として、算入するかが問題となった裁判例をご紹介します。
婚姻費用は、基本的には、権利者・義務者の収入によって判断されることになりますが、そもそも収入自体をいくらと算定するかが問題となることが多く見受けられます。
今回ご紹介する裁判例(東京高決昭和57年7月26日)は、婚姻費用義務者が約6億6000万円の財産(不動産の中には、義務者が賃料収入を得ていたものもあります。)を相続した事例で、当該相続が婚姻費用の算定にあたって、いかに考慮されるか問題となりました。
裁判所は、婚姻から別居に至るまでの間、専ら義務者が勤務先から得る給与所得によって家庭生活を営み、相手方の相続財産またはこれを貸与して得た賃料収入は、生計の資とはされていなかったことから、相続財産を算定の基礎に入れませんでした。
したがって、相続不動産から賃料収入があっても、生計の資にされていないと判断された場合には、算定の基礎にはなりません。生計の資、つまり、特有財産収入によって生活を維持しているかは、生活状況・収入状況等から個別的に判断を要することになります。
このように、婚姻費用の算定にあたっては個別具体的な判断が必要になりますので、お困りの際は、気楽にご相談ください。