では、②についていわゆる有責配偶者からの離婚請求についてはどのように判断したのでしょうか?
 以下のように、Xの離婚請求が信義則上許されないということはできないと判断しました。

 ②の点について、Xは、自分が不貞行為に及んだのは、Yが、杜撰な家計の管理から、Xに秘して多額の借金をしたり、Xが稼いだ給料をその支給日にほぼ全額費消したり、家事をおろそかにしたり、性生活を拒否し続けたり、他の女性との肉体関係を勧める暴言を吐いたりするなどしたこともあったからで、婚姻関係は遅くとも不貞行為をする以前に破綻していたというべきで、Xはいわゆる有責配偶者ではない。と主張しました。

 これに対して裁判所は、本件婚姻関係の最も大きくかつ直接的な破綻原因は、Xの不貞行為にあるというべきであるとしながら、

Yにも杜撰な家計の管理や、安易で多額なX名義での借金の繰り返し、Xに風俗店の利用を勧めるなどの配慮を欠いた言動に及んだこと、本件鍵取替後の一件等、本件婚姻関係の破綻に至る経緯において、一定程度の有責性があるというべきであり、その意味で、本件婚姻関係の破綻に関するXの有責の度合いの高さは、Yの有責の度合いの低さとの関係で相対的なものであるということができる。」

と判断しました。