面会交流は、子の心の成長にとってプラスになると考えられています。子が両方の親に愛されていると実感できる、親がどんな人物か知ることができるなどの理由からです。
ただ、面会交流の機会に子が奪取される可能性や、非監護親が子を自分の側に取り込もうとする危険もあるため、無制限に認めるわけにはいかないとも言えます。
裁判所では、面会交流を実施するかどうか、面会交流の内容・条件をどうするかについて、「子の利益を最も優先」して考えるべきとされています。子の利益をどう考えるかはとても難しい問題ではありますが、裁判所は、上述した面会交流のプラス面を考慮し、面会交流を禁止・制限すべき事情のない限り、面会交流を継続的に実施することとし、その内容や条件を調整するとのスタンスをとっています。
面会交流を禁止・制限すべき場合について考えてみます。
子が連れ去られる危険性があるとき
過去に子を連れ去ったことがある場合、連れ去りの危険はあるといえます。過去に子を連れ去ったことはない場合連れ去りの危険はなくはないのですが、第三者の立ち合いや、面会場所の限定など連れ去りを防止する条件の調整を行って連れ去るリスクを軽減することができます。
非監護親の子への監護養育が不適切であったとき
子に対する暴力を振るっていた場合は、面会交流の実施を慎重に検討しなければなりません。子が非監護親に対し強い恐怖心を抱いている場合は、この心身に十分に配慮し、面会交流を実施すべきかどうか慎重に検討しなければなりません。
非監護親が監護親に対して暴力を振るっていたとき
配偶者に対する暴力は、子に暴力を振るっていなかったとしても、子の目の前で暴力を振るわれていたことにより、子に対して大きな影響が及ぶと言われています。この場合、子の利益を害するおそれがあるので、面会交流を実施すべきかどうか慎重に検討しなければなりません。
また、この場合、非監護親と監護親が子の受け渡しをする条件についても慎重に検討する必要があります。親族や第三者機関(FPIC等)の協力を得る必要があるでしょう。
子の意思
面会するのは子ですから、子の意向の把握・尊重は重要です。ただ、子が自分の意思を表明できなかったり、子が監護親に本心を明かすことができない等子自身の葛藤があったりして、この意思の把握はとても難しいといえます。子の表面的な言動にとらわれることなく、背景事情を考慮して、子と向き合う必要があります。
面会交流は、実務上、子の利益のために、実施されるべきとされていますが、面会交流の条件や、制限・禁止についても、子の利益を考えながら決める必要があります。
弁護士 江森 瑠美