弁護士の平久です。今回から離婚のブログを担当いたします。離婚をお考えの方にお役に立つような記事をアップしていきたいと思っていますので、今後どうぞよろしくお付き合い下さい。
さて、今回は婚姻費用の請求について考えてみたいと思います。夫婦関係が悪化し、離婚をするかしないかという話をする前に、とりあえず別居をする夫婦は多いのではないかと思います。
別居をしたのは良いが、その間の生活費はどうするのだという問題は、とりわけ収入の少ない方、たとえば専業主婦の方にとって大きな問題です。この点について、民法760条は「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する」と婚姻費用の分担義務について定めています。
扶養義務については、自己と同一の生活レベルまでの扶養を要する生活保持義務と、権利者が生活困難に陥った場合に、義務者に余力があれば権利者に最低限度の生活を維持させれば足りるとする生活扶助義務とがあります。前者は「最後に残された一片の肉まで分け与えるべき義務」、後者は「己の腹を満たして後に余れるものを分かつ義務」と比喩的に言われています。民法学者の中川善之助先生の表現ですが、分かりやすくて面白い喩えですね。婚姻費用については、生活保持義務と考えられています。
婚姻費用をどう算定するかについてですが、東京・大阪養育費等研究会が「簡易迅速な養育費等の算定を目指して-養育費・婚姻費用の算定方式と算定表の提案」(判例タイムズ1111号285頁以下、以下「算定表」と言います。)というものを公表しています。調停・審判など実務はこれを利用しています。裁判においても、この算定表が利用されるようになっています(東京高裁平成15年12月26日決定家月56巻6号149頁等)。
算定表の使い方についてですが、例えば、子どもが2人いる夫婦で、子どもが16歳と12歳で、夫が給与所得者で年収が600万円、妻も給与所得者で年収が300万円とします。そうすると、婚姻費用・子2人表(第1子15~19歳、第2子0~14歳)を選択し、その表の中で義務者の年収(給与)600万円と権利者の年収(給与)300万円が交わるところを見ると、10~12万円となっていますので、婚姻費用についてはこの範囲で決めるのが標準的ということになります。
通常の範囲内の個別的事情については算定表の額の幅の中で既に考慮されており、算定表によることが著しく不公平となるような特別の事情がある場合にのみこれを修正することになります。特別の事情としては、例えば、子どもが複数いて夫に付いて行った子と妻に付いて行った子がいる場合や義務者が再婚して扶養家族が増えた場合などが挙げられます。
弁護士 平久