Q1:離婚時年金分割には「合意分割」と「3号分割」の2種類があるそうですが、どこがどう違うのでしょうか?
A:離婚時年金分割制度のうち合意分割は、平成19年4月から、3号分割の方は平成20年4月から始まりました。まず、合意分割について解説します。
1 合意分割
(1)合意分割とは?
合意分割とは、夫婦が、分割すること及び分割割合(按分割合)について合意しているか、合意できていない場合は夫婦の一方が家庭裁判所に申立をして、家庭裁判所で分割割合が決定されると、婚姻期間中の保険料納付記録を分割することが出来る制度です。
(2)第1号改定者、第2号改定者とは?
合意分割の当事者は、「第1号改定者」、「第2号改定者」と呼ばれます。第1号改定者は、厚生年金保険の被保険者または被保険者であった者で合意分割によって年金が分割される者をいいます。第2号改定者は、第1号改定者の配偶者であった者で、年金の分割を受ける人です。この2号改定者は、国民年金法の第3号被保険者(サラリーマン等の第2号被保険者の被扶養配偶者)のみならず、第1号被保険者や第2号被保険者も含まれます。
(3)分割される年金とは?
年金制度は、3階建てになっています。1階は、国民年金(基礎年金)、2階は、厚生年金や共済年金、3階は、厚生年金基金、確定給付企業年金等です。合意分割で分割されるのは、2階部分の厚生年金や共済年金です。
では、2階部分を持たない自営業者はどうなるのでしょうか?分割される年金がありませんので、自営業者の妻は、年金分割を受けられないことになります。
(4)按分割合の上限と下限について
按分割合とは、夫婦が婚姻期間中に厚生年金等に加入して得た標準報酬額を分ける際、分割を受ける側の標準報酬額を、どのような割合にするかを示す数値です。按分割合には、上限と下限があります。按分割合の上限は、2分の1です。按分割合の下限は、夫婦各々の対象期間標準報酬総額の合計額に対する分割を受ける側(第2号改定者)の分割前の対象期間標準報酬総額の割合です。
例えば、夫の標準報酬総額が7000万円で、妻の標準報酬総額3000万円の場合、3000万円÷(7000万円+3000万円)×100で30%が下限となります。従って、按分割合の範囲は、30%を超え、50%以下となり、夫婦で合意してもこの範囲を超えて定めることは出来ません。
(5)請求可能期間について
合意分割は、原則として、離婚の時から2年以内に請求する必要があります。
弁護士 石黒麻利子