こんにちは。
 今日は、夫婦仲が悪くなって別居する場合に、家を出る方はどうやって荷物を持ち出すか、という問題についてお話します。

 別居する場合のパターンとしては、計画立てて家を出るパターンと、いきなり家を出るパターンとがあります。ここからは、自宅を出たのは妻、自宅に残ったのは夫として話します。

 計画立てて家を出る場合は、ある程度の荷物を持って出られるので、必要なものは別居時に一切合財持って出て、あとは自宅には戻らないというやり方が可能です。

 しかし、いきなり家を出るパターンの場合は、着の身着のままと言うことが多く、必要な物を持って出る事が出来ません。そこで、別居後に、必要な物を自宅に取りに帰らないといけなくなりますが、夫の暴力から逃れるために別居した、というような場合は、妻は自宅に戻るなんてできません。また、妻が勝手に自宅に入って好きなように物品を搬出するとなれば、夫から「自分の物を勝手に持って行かれた!」と余計な争いを招くことになってしまいます。

 もし弁護士に依頼していれば、これらの問題に対処するため、弁護士が妻に代わって、必要な物品を渡してもらえるよう、夫に依頼することになります。

 持ち出し方としては、弁護士の事務所に対して物品を送付してもらう、妻の弁護士と夫の立会いの下、物品を持ち出すなどの方法が考えられます。

 ただし、夫が全く協力してくれないと、これらの方法をとることはできません。

 最近私が経験した案件で、自宅に残った夫は協力的なのですが、ちょっとした紛争になってしまったものがあります。というのも、自宅を出た妻が、あまりにも細かく大量の物品を求めてきたために、夫が物品を探しきれず、妻は「自宅にあるはずだ。」と言うし、夫は「もう送ったらしく、自宅にはない。」と言うしで、収拾がつかなくなってしまったのです。通常、自宅を出た妻が求める物は、衣類、家電製品等なので、どこにある何を求められているのか、どのようにして渡せばよいかについては、あまり悩むことはないのですが、この件では、私も相手方の弁護士も、一体どこの何を渡せばよいのか悩みました。相手方弁護士が「思考回路が停止してしまいますね。」と言ったほどでした。

 この案件から学んだのは、あまりに物品に対する要求が細かすぎると、かえって無用な紛争を引き起こす、ということです。無用な紛争が生じると、メインの争点である、婚姻費用、離婚、親権、養育費などの問題が後回しになってしまうこともありますので、物品に対する要求は、ほどほどにしておいた方がよいのかもしれません。