皆様、こんにちは。

 有責配偶者からの離婚請求に関しては、当ブログでも何度か取り上げられていますが、今回は別居期間の点にスポットをあてて見てみたいと思います。

 当ブログでも既出のように最高裁昭和62年9月2日判決が有責配偶者でも離婚できることを認めた最初の判決になります。同判決は、有責配偶者からの離婚請求に関し、

 「有責配偶者からされた離婚請求であっても、夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及び、その間に未成熟の子が存在しない場合には、相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的にきわめて過酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情の認められない限り、当該請求は、有責配偶者からの離婚請求であるとの一事をもって許されないとすることはできない。」

と判示し、①「相当長期間」の別居、②未成熟子の不存在、③相手方配偶者が過酷な状態に置かれる等、著しく社会正義に反する特段の事情の不存在、という要件を課して離婚を認めました。

 本件は、同居約12年、別居約36年、夫から妻への離婚請求という事案でした。

 その後、最高裁判決が相次いで現れて離婚請求が認められる場合の別居期間が徐々に短縮され、結果10年程度が目安と見られようになっています。

 別居期間が特に短いものとしては、同居約23年、別居約8年弱、夫から妻への請求という事案において、有責配偶者からの離婚を認めた最判平成2年11月8日判決【①】や同居約22年、別居約6年、夫から妻への請求という事案において、認めた東京高判平成14年6月26日判決(最判平成14年11月14日で維持)【②】があります。

 ただ、①は、妻及び子らに対する生活費の負担をし、別居後間もなく不貞の相手方との関係を解消し、更に、離婚請求するについては、妻に対して財産関係の清算についての具体的で相応の誠意があると認められる提案をしているという事案でした。

 また、②は、夫から妻への請求で、破綻の主たる責任は夫であるものの、妻にも相当程度の責任があるされた事案でした。

 一方で、婚姻後同居約22年、別居8年で「双方の年齢(事実審の口頭弁論終結時、夫60歳、妻57歳)や同居期間を考慮すると、別居期間が相当の長期に及んでいるものということはできない」とした最判平成元年3月28日があります。

 このように、最高裁は、単純に別居期間の要件を短くしているわけではなく、あくまでその事案の諸般の事情を考慮して短くしているといえます。

 したがって、最高裁が別居期間が短くても有責配偶者からの離婚請求を認めるケースが増えていることは確かですが、あくまでも事案によるのであり、結局、長期間であるか否かの判断も、単なる時間の長さの問題はでなく、諸般の事情との相関関係で判断されるということに注意する必要があるといえます。

弁護士 髙井健一