こんにちは。長谷川です。
寒くなってきましたね 気持ちの良い(?)季節ですね。
さて今日は、子どもの誕生と夫婦関係の破綻についてつらつらと書いてみようと思います。
妊娠・出産は、「夫婦の危機」の1つと言われています。
これは、1つには、妊娠→出産により、妻側に大きな生理的変化が生じる為だと言われています。
もう少し具体的にいうと、妊娠→出産といった過程で、妻の関心が子どもに集中する為なのか、また自分自身の存在全てが子どもの為にある(逆にいうと「夫のためにはない」)という意識になる為なのか、或いは単にホルモンバランスのせいなのか、とにかく「子どもに授乳する為の胸や子どもを抱く体を夫に触れられたくない」等といった感情を抱き、夫と性的な交渉を持てなくなる妻が少なくないということです。
夫の立場からすると、妊娠期間中、ずっと性的な行為は我慢させられてきたのだから(まあ、これ自体、妊娠が夫婦の危機の理由の1つなわけですが)、出産後は、当然、以前のように妻と性的な交渉を持ちたいと考えるわけです。
ところが妻側から拒絶されてしまい、しかも妻は子どもにかかりきり・・・となると、なるほど、夫側が夫婦関係に不満を持つことも頷ける面があります。
この段階で夫婦がきちんと体のコンディションやコミュニケーションの取り方について話合いができると良いんですが、なかなか上手くはいかないことも多いようです。
そうすると性的欲求不満を抱えた夫側が不貞に走ったり、先の見えないセックスレス状態に耐えきれず離婚を考え出すという事態になってきます。
離婚相談を受けていると、こういった妊娠/出産にまつわる生理的変化に翻弄される夫婦って少なくないんですよね。
更にこの生理的変化が複雑だなあと思うのは、妻側は必ずしも性的欲求が減少/消滅しているわけではないと思われる点です。その結果、夫とは没交渉なのに、別の男性と性交渉をもっている(=不貞)という状態が生じることもあります。
私が実際に扱った事件での話なのですが、妊娠→出産を経た妻が夫を性的に受け入れることができなくなりました。ところが妻は、夫を拒む一方で、出産後数ヶ月で不貞行為を行っていました。で、夫は離婚を決意し、最終的に協議離婚が成立しました。
この事件で私は夫側の代理人だったのですが、妻の言い分で印象的だったのは、「出産を機に、夫が生理的に受け入れられなくなった。」「性的な欲求がなくなったわけではないが、夫とは性交渉ができない。」「夫を嫌いになったわけではないし、夫に悪いところはない」という点でした。
妻本人も、なぜ夫を受け入れられなくなったのか分からず、ただ生理が変わったとしか説明ができないようでした。
「子どもの誕生」っていうと、普通は、夫婦の絆を一層強くする重大イベントのように思われますし、諺にも「子はかすがい」なんて言葉がありますよね。
でも、実際には必ずしもそう言い切れないところが、夫婦や家族の深く切ない話のように思います。
弁護士 長谷川桃