遅刻・早退・欠勤の賃金はカットできるのか

 更に出退勤時間や遅刻・早退、欠勤の取り扱いにも注意が必要です。

 例えば、何時間働こうと、「みなし時間働いた」と見なされるということは、一見すると出退勤は自由ということで、遅刻/早退という概念も無関係であるかのように思われます。
 しかし裁量労働制は、単に、使用者の労働時間管理/算定義務を免除しただけの制度ですから、いわゆるフレックスタイム制のフレキシブルタイムみたいに、出退勤が自由になるわけではありません。従って、始業・終業時間がありますので、遅刻/早退という概念は存在します。

 とすると、裁量労働制を適用されている人が遅刻したら、遅刻した時間分の賃金はカットできるということになるのでしょうか?

 残念ながら、これはできません。遅刻したこと自体は、何度も繰り返されれば、懲戒処分等の適用が考えられます。しかし遅刻していても、現実に裁量労働に従事しているわけですから、みなし時間は労働したとみなされ、遅刻分の賃金カットはできないということになります。

 他方、裁量労働制は欠勤=裁量労働に従事しないということを前提とする制度ではありませんので、労働者が自由に欠勤できるということを意味しません。
 裁量労働に従事しなければ、みなし規定の適用の余地もありませんから、給与算定方法が日給/月給の場合には、賃金をカットすることは可能ということになります。(ただし、完全月給制だと、賃金カットはできません。)