裁量労働制と残業代
また、使用者は、裁量労働制の導入により、労働時間の管理/算定義務を免れます。つまり、実労働時間をいちいち把握しなくても、◯時間働いたとみなすことができるので、みなし時間が合理的に決定されている限り、たとえ、労働者の能率が悪くて、ダラダラと残業していても、会社は、みなし時間以上の賃金支払義務が発生しないわけです。
但し、深夜労働や休日労働分の割増賃金は支払わなければいけません。即ち、中小企業の場合は、深夜労働時間については、実労働時間を把握して、その時間×25%以上の割増賃を、休日出勤については35%以上の割増賃金を支払わなければなりません。
またそもそもの「みなし時間 ◯時間」についても、実際の業務状態に照らして合理的に定められていなければなりません。みなし時間が、余りに現実の勤務時間とかけ離れていると、裁判所で争われた場合に、みなし時間の定めが「無効」とされかねません。
つまり、実際の労働時間にかけ離れたみなし時間を定めて、実際にはみなし時間を遥かに超えて労働させておきながら、結局はみなし時間分の賃金しか支払わないということになると、裁判所がみなし時間の定めを無効として、実労働時間を前提とした賃金を支払えということになりかねません。(要するに残業代です。)
従って、みなし時間の定めを、安易に所定労働時間とすることには注意が必要です。