1.総論
前回は、「二次的著作物」について説明しました。
今回は、「著作者」について説明していきたいと思います。
なお、「職務著作」などの例外の方が注目されがちですが、今回扱う「原則」を理解できてこそ、「例外」の位置づけも理解できるというものですので、原則をきちんと理解することが肝要です。
2.著作者の認定
著作者とは「著作物を創作する者」(2条1項2号)のことをいいます。
著作者が、著作者人格権と著作権を享有します(17条)。契約で著作者を変更することは出来ません。
著作物が、「思想又は感情を創作的に表現したもの」である以上、内心にとどまっているものではありません。そうすると、そのような外的に表現する行為をした者、つまり、事実行為としての創作行為を行った自然人が「著作者」なのです。
3.著作者の判断
(1)判断手法
判例・学説上、著作者の認定は、
ある著作物の創作過程において、その者が行った行為を客観的に観察し、それが事実行為としての創作行為と評価できるかどうか
によって判断されていると言われています(上野達弘「著作者の認定」牧野=飯村「新・裁判実務体系(22)著作権関係訴訟法」(青林書院、2004)216頁参照)。
すなわち、主観的意図や、創作後の事情が直接問題になるわけではなく、あくまで、創作過程における客観的行為が判断の対象となるのです。
(2)判断基準
「事実行為としての創作行為」と評価できる行為とは、要するに、著作物の作成といえる行為かどうか、ということです。
客観的な事実行為ですから、「表現した」ものであることを要し、創作行為であることから「創作性」も必要となります。これは結局、著作物の要件のうちの「表現」「創作性」と同じことを指していると考えればよいと思います。
結局、著作物の事実行為としての作成を行っている者、を著作者ということになります。
(3)事実行為としての創作行為にならない例
①単なる創作の依頼、アイディアの提供、抽象的な指示を行ったに過ぎない者は著作者とは認められません。
上記のように著作物の作成には、創作性・表現、の要件が必要ですが、これらの場合、表現の要件を満たさないからです。
②資料の提供、キーボードの入力の作業、資金面での援助など物理的な協力を行ったに過ぎない者も著作者としては認められません。
これらの場合は、創作性の要件を満たさないからです。
弁護士 水野太樹