相談内容

 当社は、海外から売れそうな商品を掘り出してきて、インターネットで通信販売する会社なのですが、実はこの前、当社の営業部長が、韓国で話題の美顔器具を大量に買い付けてきたのです。

 そして、早速、健康器具の通信販売ブームに乗っかって大々的に売り出すこととし、定価4万9800円で売り出しました。

 ところが、これが全く売れず、倉庫代ばかりかさんでしまって、倒産しそうな状況です。

 そこで、社内で大会議を開いて方策を検討し結果、以下のような方法が良いのではないかという結論に至りました。その方法というのが、日本人の「期間限定」とか「限定何個」というフレーズに弱いところに目をつけて、「限定50個!今週土曜日までに購入すれば5000円引!」というキャッチコピーで販売してみることにしました。もちろん、実際のところは、商品はたくさんあるし、来週になったら、また同じようなキャッチコピーで、「限定50個」、「土曜日までなら安い」というアピールをして販売する予定です。

 この方法を試してみたところ、キャッチコピーが大当たりしたのか、倉庫で眠っていた商品が、毎週50個以上飛ぶように売れましたので、ホッと一安心していました。ところが、昨日、突然、スーツを着た公正取引委員会という人達がやってきて、当社が考えたキャッチコピーは景品表示法に違反する行為だからすぐに止めろと警告してきたのです。

 でも、当社は、価格についてウソをついているわけではないし、お客さんとしても、結局は商品を安く買えるわけだから、何の問題もないと思っています。先生、どうすれば良いのでしょうか。

回答

1.景品表示法の趣旨

 景品表示法とは、正式には、不当景品類及び不当表示防止法といいます。

 消費者は、商品を購入するにあたり、より質の高いもの、より価格の安いものを求めますし、商品を販売する事業者等はそのような消費者の期待に応えるため、他の事業者の商品よりも質を向上させ、また、より安く販売する努力をします。

 このような、消費者と事業者の間の活動が「健全に」繰り返されることによって、より高品質且つ低価格の商品が市場に供給され、消費者の利益を保護することが可能となるのです。

 ところが、品質や価格などに関して、誇大な広告や過大な景品類の提供が行われるようになると、消費者が誇大な広告に惑わされたり、商品を選択する際に商品の品質ではなく景品の善し悪しに左右されたりするようになり、その結果、質が高く尚且つ価格の安い商品を選ぼうとする消費者の適正な選択に悪影響を与えてしまいます。

 また、もし、広告の内容や方法、景品類の提供に何の規制もしないと、事業者が、消費者受けする広告や景品類の選定ばかりに力をいれるようになり、本来あるべき「商品の品質による競争」ではなくなってしまい、公正な競争が阻害されることにもなってしまいます。

 そこで、公正な競争を確保し、もつて一般消費者の利益を保護することを目的として景品表示法が制定されたのです。

2.有利誤認表示

 このような目的・趣旨の下、景品表示法第4条第1項第2号は、商品取引に関して、「実際のものよりも…取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる」表示の使用を禁止しています。

 具体的には、商品・サービスの取引条件、購入方法などについて、実際よりも顧客にとって有利であると偽って宣伝したりする行為、例えば、過去に定額で販売したことがないにも関わらず、広告などで「今なら通常価格から1000円引」などと表示する行為が「有利誤認表示」に該当することになります。

 この場合、公正取引委員会から、当該「有利誤認表示」と判断された行為の差止命令がなされたり、又は、このような行為が再発を防止するために必要な命令がなされたりすることもあるので注意が必要です。

3.回答

 確かに、相談者さんの言うとおり、お客さんにとってみれば商品を安く買えるわけだから、何も悪いことをしていないようにも思えます。

 しかし、いつでも「5000円引き」なら、最初から「5000円引きの値段」を表示すれば良いわけで、それにも関わらず、お客さんに「見せかけのお得感」を与えて、お客さんを引っ張ってきてしまっているところに問題があるのですね。

 もっと正しい販売方法を考えて、何よりも、商品の質で勝負するようにしてください。

弁護士 細田大貴