こんにちは。本日も、著作権に関する話なのですが、差止請求をすることができるのは誰なのかについての話をしようと思います。

 著作権法には、「著作者、著作権者、出版権者、実演家又は著作隣接権者は、」差止請求をすることができる旨が定められています。これだけ見ると、簡単なようですね。

 しかし、差止請求をすることができる地位にあるか、という点がそもそもの争いになることもあります。

 これには、差止請求をしている人が、そもそも「著作者」といえるかどうか、という争いとして表れるパターンがあります。

 例えば、とあるアイドルグループに関するインタビュー記事と類似の記事が出版された際、当該アイドルたちが、自分たちは、出版社とともに共同著作者である、として、類似の記事の出版について差止請求をしたケースがあります。このケースにおいては、アイドルたちは、あらかじめ用意された質問に回答しただけで、その後記事にする際に回答の取捨選択や表現上の加除訂正等には手を加えていないという点から、「文書表現の作成に創作的に関与したということはできず」文書の著作者とはならないとされ、アイドルたちが差止請求することはできないと判断されました(東京地方裁判所平成10年10月29日)。このように、「誰が著作者か」という視点は、ありとあらゆる著作物において問題になり得、いろいろなパターンがありますが、簡単にいえば、創作的表現をした者かどうかによって、著作者であるかどうかが判断されます。

 また、著作権や出版権などの権利は譲渡されることによって著作物が利用されたり、著作物の利用許諾により著作物が利用されることもあります。そのため、著作物を利用している自分が、はたして、差止請求できる地位にいるのかどうなのかがあいまいになってしまう場合もあります。

 例えば、複製、公衆送信、翻案等、著作物のあらゆる利用方法について包括的に許諾されている場合、その人は自分が著作権者であるかのようにも感じられます。しかし、このような場合、利用許諾されているだけですから、もちろん著作権者ではありません。また、著作権者自身が、複数の人に同じように利用許諾をすることも基本的に可能ですから、自分が利用許諾をされたからと言って、それだけで他の著作物利用者に対して、差止請求をすることができることにはなりません。利用許諾というのは、あくまで、著作権者が、許諾を受けた人に対し、著作物の利用を禁止しないという約束にすぎないのです。

 ここで話しているようなことは、当然のことだと理解できるかもしれませんが、実際に著作権に関する契約をする際は、利用許諾なのか著作権の譲渡なのか、意識的にはっきりさせておかなければならないということです。そうしなければ、将来的に、差止請求できる契約だと思っていたのにできなかった、ということになりかねません。