時折、急に冷え込んだりしますが、だんだんと暖かくなってまいりましたね。
 さて今回も商標法の続きを見ていきたいと思います。

3.商標登録及び商標登録出願

(1)使用主義と登録主義

 使用主義とは、商標が現に使用されていることを商標登録の要件とする考え方です。他方、登録主義とは、出願された商標が現に使用されているか否かということは問題とせず、登録されていれば登録商標として保護を受けるという考え方です。

 日本の商標法をみると、法第3条において「自己の業務に係る又は役務について使用する商標については、……商標登録を受けることができる。」としています。一見すると「使用」を要件としているようにも思えますが、「現に使用」していることは要件としていません。したがって、日本の商標法は登録主義を採用しています。

ただ、「使用」という言葉が出ています。この意味は、出願者に商標を使用する意思がなければならないとしているということです。すなわち、登録主義を採用しながらも、これを徹底せず、使用主義の考え方も盛り込んでいるということでしょうか。

 商標を使用するためには、広告宣伝をするなど、多大な費用がかかってしまうこともあります。使用を要件としていたのでは、誰かに先に登録されてしまって、せっかく先に使用意思を持ったのに使用手続のために登録が遅れて、大損をすることとなってしまうことがありえます。これを防止しようということから登録主義を採用したのでしょう。

(2)先願主義

 商品または役務が同一または似通っている範囲で、同一または似通った商標の出願が何人かで競合した場合、どう処理するのでしょうか。両方とも登録してしまっては、需要者は出所を把握できなくなり、使用者にとっても信用の化体の意義がなくなってしまいます。

 この場合、別々の日に出願があった時は、最も早い日に提出した人の商標のみ登録を受けることができることができます(法8条1項)。これが先願主義です。なお、同じ日に出願があった時は、早い時間順ではなく、当事者間で協議の上、誰の商標の登録を受けることができるのか決め、その協議に従い、そのある1人の出願した商標のみ登録を受けることができます(同2項)。

 先願主義は、需要者の混同を防止することも目的としていますので、先願者がいくら後の商標の登録を良いといっても登録は認められません。

 ただし、1番目の出願が取り下げられたり却下されたりした場合などには、初めから出願がなかったものとみなされます(同3項)ので、2番目の出願が登録されることとなります。

 また、過去に登録されていた商標が取消しなどによって消滅していても、消滅の日から1年経過していないときは、混乱を避けるために登録を受けることができません(法4条13号)。だたし、これはあくまでも混乱防止のためにありますので、消滅の日より1年以上前から使用していなかった商標については登録が認められます(同13号括弧書き)。

 なお、出願の先後の判断について、実際の出願時点と異なる時点が出願時とみなされる制度があります。たとえば、博覧会への出品等、出願の分割、出願の変更、国際商標登録出願などの制度です。これらについては追々ご説明していきます。

 以上のとおりですから、商標を登録するときは、使用してからなどと悠長なことを言っていないで、至急、使用意思をもって素早く登録手続を行ったほうがよいということですね。

弁護士 松木隆佳