一般社団及び一般財団法人に関するご質問が最近増えてきたため、今回は、一般社団及び一般財団法人に関し、その概略をご説明したいと思います。
1.一般社団法人及び一般財団法人に関する法律が制定された背景
従来、公益法人を設立するためには、主務官庁による許可が必要とされ、法人格の取得と公益性の認定が一体となっていました。
そのため、法人設立が簡便ではなく、また、公益性の判断基準が不明確である等、様々な問題が生じていると指摘がなされてきました。
そこで、法人格の取得と、公益性の判断を分離し、剰余金の分配を目的としない非営利の社団及び財団について、その事業の公益性の有無に関わらず、登記のみによって簡便に法人格を取得することができる法人制度が創設されました。
以下、一般社団法人と一般財団法人のポイントについてご説明したいと思います。
2.一般社団法人と一般財団法人の違い
一般社団法人は、一定の目的のために集まった人の集合に法人格を付与するものである一方で、一般財団法人は、一定の目的のために集められた財産の集合に法人格を付与するものであるため、法人格の付与の対象が異なります。
その結果、組織に関する規律も異なることになりますが、設立段階では、一般社団法人は社員となろうとする者が2人以上集まることが必要となる一方で、一般財団法人は設立者が300万円以上の財産を拠出することが必要となる等、その組織形態に応じた差異が生じます。
3.事業に制限がない
一般社団法人も一般財団法人もともに、その行うことができる事業には制限がありません。そのため、公益事業を行う団体だけでなく、共益的な事業、または収益事業を行うことも可能となります。
ここで、収益事業を行うことができるということと、非営利性は相反するのではないかといった疑問を生じさせる方もおられると思いますが、相反することはありません。
その理由は、非営利性には、①収益事業を行わないといった意味の他に、②剰余金の分配や残余財産の分配を行わないといった意味があるところ、一般社団及び一般財団法人法における非営利性は、②剰余金の分配や残余財産の分配を行わないといった意味のみを指しているからです。
そのため、一般社団法人や一般財団法人は、収益事業を行い、その利益を当該法人の役員報酬や活動経費等に充てることも可能と考えられます。
4.メリット
社団や財団が法人格を取得する意義は、社員や設立者を離れて、社団または財団自体が法人として私法上の権利義務関係の帰属主体となることができる点にあると考えられます。
そのため、一般社団法人や一般財団法人の名義で、銀行口座の開設や不動産等の財産の登記、登録が可能となり、対外的な権利義務関係が明確になるというメリットが考えられます。