こんにちは。
 今日は、会社の占有と個人の占有についてお話したいと思います。

 会社が、会社名義で会社代表者の住居を賃借したり、従業員の住居を賃借したりすることはよくあります。  このような物件で、賃料が滞納され、賃料不払いを理由に裁判によって明渡しを求めたいとき、契約書には、会社が賃借人として記名押印をしていますので、会社を被告として訴訟を提起するのが通常です。

 しかし、無事に債務名義(判決)が得られ、いざ強制執行しようとしても、会社を相手取った債務名義では、会社代表者や従業員が住居としている物件の明渡しを執行することができないことがあります。
 強制執行の理由となる債務名義は、あくまで会社の占有を排除して明け渡させることのできる債務名義であって、会社代表者や従業員の占有を排除して明け渡させることを認める債務名義ではないからです。

 明渡しの催告(明渡しを実施する前に、執行官と物件に訪れて賃借人に対して猶予期間を決めて退去を求める手続です。)の際に、会社が借りている物件が、事務所ではなく実は会社代表者や従業員の住居として使われていることが判明し、その物件を占有しているのは会社なのか、それとも会社の代表者や従業員などの個人なのか、問題となることがしばしばあります。
 その際、電気、ガス、水道などのライフラインの契約者が誰であるかがよく参考にされます。
 執行官によっては、会社代表者が会社名義で自分の居住用に賃借していた物件については、実際の占有が会社ではなく会社代表者個人にあると考えられる場合でも、会社に対する債務名義で強制執行をしてくれる場合もあるようです。
 しかし、従業員の社宅として会社名義で借りていたような場合で、ライフラインは従業員個人名義で契約していたような場合、会社に対する債務名義で、従業員に対して明渡しを執行することは、難しいように思われます。

  会社が賃借人となっている場合、物件がだれにどのような用途で使用されているのか、ライフラインの契約名義はどうなっているのか、できれば把握しておきたいところです。