こんにちは。弁護士の吉成です。
今回は債権回収のお話をします。
企業にとって、取引先からの支払が滞るということは、時に死活問題になりますので、債権回収をいかに行うかは重大なテーマになっていると思います。
ところで、いくら自社に正当な権利があっても、自力救済は禁止されています。
たとえば、自社が卸した商品の代金を期限が過ぎても払ってもらえないからといって、その商品を勝手に回収してしまったら、窃盗罪になってしまいます。したがって、債権回収は、任意に支払い等を受ける、担保を実行する、債務名義(判決等の強制執行によって実現されるべき債権の存在および範囲を公的に証明した書面)を得て強制執行を行うなどといった方法で行う必要があります。
以下、主要な方法について述べます。
(1)交渉
- 交渉は、文字通り、話合いによって、任意に払ってもらうものです。基本的に、債務者は、うるさ方から支払っていこうとするため、何度も催促をすべきなのが基本ですが、感情を悪化させ、逆効果になる場合もあるので、状況に応じて適切な判断をすべきです。
- お金がないと言われた場合には、財産的価値のある物の代物弁済を受ける、取引先の第三者に対する債権の譲渡を受ける、取引先の第三者に対する債権に譲渡禁止特約がついているような場合には代理受領権を設定してもらう、相手方から商品を購入するなどして相殺するなどの柔軟な手段を検討するのが良いと思います。
なお、債権譲渡については、資金繰りの悪化した会社が、二重、三重に債権譲渡を行うことも少なくないので、注意した方が良いです。 - 猶予を求められた場合には、財務状況について詳しい説明をさせ、猶予をすれば本当に支払えるのか判断します。この際、資金繰表の作成を求めることなども有効だと思われます。
保証人を立てさせていなかったり、担保権の設定をしていなかったり、公正証書を作成していないような場合には、猶予と引きかえにこれらを行わせることも検討します。 - 場合によっては、一部免除などのインセンティブを与えることによって、支払を促すことが有効な場合もあります。
- 交渉の場になかなか出てこないような場合、交渉に誠実に応じようとしないような場合、内容証明郵便による督促状の送付、弁護士の介入なども検討すべきです。
(2)担保権の実行、保証人への請求
交渉が進まなければ、担保権の実行や、保証人への請求を検討します。
もちろん、事前に設定を受けていることが前提です。
(3)調停
話し合いの余地はあるが、当事者間で話が進まない場合、調停を申し立てるという方法もあります。
調停は、あくまで調停員という第三者が間に入った話合いですが、合意に至れば、調書が作成され、これに基づき、強制執行が可能となります。
(4)仮執行宣言付き支払督促
債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する簡易裁判所の書記官に申し立て、書記官が督促を発するというものです。
相手に送達された後、2週間以内に異議がでなければ、債務名義が得られ、強制執行が可能となります。
裁判所から届く督促状ということで、支払を動機付けられるという点や、異議が出なければ強制執行が可能になる点でメリットがあります。
ただし、異議が出た場合には、通常の訴訟に移行します。
相手方が債務の存在について争う姿勢がないような場合に効果的であると考えられます。
(5)少額訴訟
訴額60万円以下の事件においてのみ利用可能です。
原則として1回で終わるため、通常の訴訟と比べて、迅速な解決が図れます。
(6)仮差押え、仮処分
訴訟で債務名義を得るまでに相手方が財産を処分、隠蔽してしまうと、訴訟をしても無駄になります。そこで、予め、仮差押え、仮処分によって相手方の財産を押さえておくことが有効となります。
また、弁済や交渉等を拒否していた債務者が、営業用財産の仮差押え等をされて慌て、弁済や交渉に応じて、訴訟に至らずに解決に至るケースも少なくありません。
(7)訴訟
- 他の手段でだめなら、最終的には、通常の訴訟を検討せざるを得ません。
- 訴訟では、多くのケースは双方が妥協して、和解で終わります。和解調書も債務名義となり、強制執行が可能となります。
- コストと時間のかかる手続ですが、支払が滞っている原因がトラブルである場合には、最初から訴訟を提起する方が早い場合もあります。
弁護士 吉成安友