こんにちは。弁護士の吉成です。
 今回は、商標権の効力についてお話しします。

 商標権の効力としては、専用権と禁止権があります。

 専用権とは、商標権の最も基本的な効力であり、商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標を使用する権利を専有するというものです。

 ただ、専用権だけでは、登録商標の保護として十分ではありません。
 なぜなら、類似の商標を使ったり、指定商品と類似の商品や役務に使ったりした場合でも、識別機能を初めとした、商標の各機能が害される可能性があるからです。

 たとえば、自社が、石鹸を指定商品として「イロハニ石鹸」という商標を登録していたところ、他社が「イロハミ石鹸」などいった紛らわしい商標を使って石鹸を出したとします。このように登録した商標と全く同一の商標でなくても、紛らわしい商標が使われれば、自社の商品を他社の商品と識別させ、出所を示したり、品質を保証したり、広告宣伝をするという商標権の機能が害されてしまいます。
 また、たとえば、酒類を指定商品として「ABCD」という商標を登録したところ、他社が清涼飲料水に「ABCD」という商標を使った場合も、識別機能等が害されます。

 そこで、商標法は、

 ① 登録商標と類似の商標を指定商品又は役務に使用する行為
 ② 登録商標を類似の指定商品又は役務に使用する行為
 ③ 登録商標と類似の商標を類似の指定商品又は役務に使用する行為

 を商標権に対する侵害行為とみなすとしています。
 そして、このような行為の禁止を求める権利が、禁止権と呼ばれています。

 こうした専用権、禁止権の範囲で商標権が侵害され場合、商標権者は、差止請求、損害賠償請求をすることができます。

 差止請求においては、現に侵害がされている場合に停止を求めるだけではなく、侵害のおそれがある場合に侵害の予防を請求することができます。
 また、差止請求をする場合、侵害の行為を組成した物の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な行為を請求することもできます。
 なお、差止請求において、相手方の故意過失は要件とされておりませんので、商標権の侵害をしている者が、登録商標の存在を知らなかったとしても、差止が認められます。

 損害賠償請求においては、商標法が、損害額の推定規定を置いており、侵害行為者が商品を譲渡した場合には、侵害行為者が譲渡した商品の数量に商標権者がその侵害行為がなければ得られた単位数量当たりの利益の額を乗じた額を、商標権者の使用の能力に応じた額を超えない限度において、損害額とすることができるとされます。
 たとえば、侵害行為者が500個の商品を売った場合で、商標権者が自社の商品を売ると1個あたりの利益が1万円だった場合、最大で500万円を損害として請求できるということになります。

 なお、商標権を故意に侵害した場合には、刑事罰も課せられます。
 この罰則については、直接侵害をした場合には、10年以下の懲役か1000万円以下の罰金が科させられるか、これらの懲役と罰金が併せて科せられます。
 また、法人の代表者、従業者がその業務に関し、侵害行為をした場合には、法人にも3億円以下の罰金刑が科されます。
 刑事罰の重さからも、現代社会における商標権の重要性が伺われます。

弁護士 吉成安友