1.はじめに

 国会の審議を経て、昨日(6月3日)、改正独禁法が成立しました。
 この改正法は、早ければ来年の年明け頃に施行されるという見通しです。
 従来から、欧米の独禁法に比べると、日本の独禁法は甘いと言われてきました。では、今回どのような改正が行われたのか、そのポイントを整理して紹介したいと思います。

2.改正のポイント

1)課徴金の適用範囲の拡大

 従来、課徴金の対象とされていなかった違法行為に対して、新たに課徴金の対象とされたものを以下に列挙します。

・競合他社の事業や新規参入を妨げる排除型私的独占
・不当廉売
・大企業が下請企業に不利な取引を強要する優越的地位の濫用

2)課徴金の強化

 談合やカルテルについては、以前から課徴金の対象とされていたのですが、抑止力として不十分であるということで、強化されています。

 談合などでは、通常それを仕切っている「幹事業者」がいるのですが、この幹事業者を談合の主犯と位置づけて、5割増の課徴金が課されます。改正前は、5割増しの課徴金は、再違反の場合だけでした。

 もっとも、違反を自主的に申告してきた企業に対する課徴金の減免措置の適用範囲も広げて、自主申告を奨励しております。現実的に摘発は容易ではないので、自主申告による恩恵も与えて摘発の効率性を図っています。

 改正前は、先着3社までの自主申告を減免対象としていましたが、改正法は、5グループ会社にまで拡大しております。

3)刑事罰の強化

 談合やカルテルが行われた場合に個人に対して科される刑事罰は、3年以下の懲役刑でしたが、5年以下の懲役に加重されました。

4)合併の届出及び審査

 合併は、会社の規模が大きくなるので、独占に向かう傾向があります。そこで、独占状態に至っていないかを公取委が調査する糸口をつかむために、届出が義務づけられています。

 今回の改正のポイントは、この届出が、事後的ではなく事前の届出に変わった点です。

 また、審査を義務づける基準も、資産基準から売上高基準に変わりました。すなわち、改正前は、合併側(子会社を含む)の総資産100億円以上、被合併側(単体)の総資産額10億円以上のケースで審査を義務づけられておりました。ところが、改正法は、合併側(グループ全体)の売上高200億円以上、被合併側の親会社の売上高50億円以上の場合に、審査義務が課されることになりました。

 これは、規制が強化されたというよりは、独占の禁止という趣旨に照らして、資産基準よりも売上基準の方が合理的であろうという認識によるものと思われます。