「やられたらやり返す。倍返しだ。」
去年流行ったドラマで、すっかり人口に膾炙したこのフレーズ。
やり返すのは極めて痛快ですが、犯罪で報復はご法度。
「やり返す」行為自体がまた犯罪となってしまいます。
犯した罪は検察官が糾弾し、裁判官が裁く。
被害者は、検事から事情聴取を受けて供述調書を作られるだけで、
何なら裁判所に呼んでさえもらえない。
やり返すことが認められないとしても、
せめて、受けた被害の大きさを裁判官に伝えたい。
今もなお苦しんでいる状況を、裁判員に理解して欲しい・・・。
そんなニーズに応える制度が、「被害者参加手続」と呼ばれるものです。
被害者参加については、私自身の以前の記事でも触れています。
「犯罪被害と弁護士の役割」
今回は、刑事手続で被害者がどのようなことができるかについて、考えてみたいと思います。
犯罪の被害者が刑事裁判に登場する場面としてもっとも分かりやすいのは、
被害者が証人として法廷で証言するところかと思います。
「最愛の娘を返してください・・!」
涙ながらに法廷で訴える、多くの場合は証人尋問だと思います。
しかし、刑事裁判で証言をするためには、検察官が「証拠調請求」という手続をとらなければなりません。
検察官が、被害者の証言を必要ないと考えた場合、証言をすることができないというデメリットがあります。
そこで、刑事訴訟法は、検察官の立証の方針に関わらず、被害者に、法廷で話をする機会を設けています(刑事訴訟法292条の2)。
ここでは、被害者として、被害に関する心情や事件に関する意見を述べることができるとされています。
一人で法廷に立つのが不安だったり、被告人と顔を合わせるのが怖い、いやだ、などといった場合には、
証人をついたてでさえぎって保護したり、場合によっては別室でビデオでつないで話をしてもらったり、
といった方法を取ることもできるとされています(同6項、同157条の2、157条の3)。
この意見陳述は、被害者からの申し出があれば、被告人・弁護人はもちろん、検察官や裁判所も、
原則としてこれを無視することができない仕組みになっています。
自らの受けた被害の大きさを訴えて被告人への厳罰を望むなら、この制度は非常に有意であると思います。
そのほかに、証人や被告人に対する直接の質問ができるほか、
事実や法律の適用に関する意見を述べることもできますし、
これらを弁護士に委任して行ってもらうことも可能です
(法律上、これらの手続のことを、狭義の「被害者参加」と呼んでいます)。
少し長くなってきましたので、これら狭義の被害者参加の手続については、次回詳しくお話をしたいと思います。