弁護士の関です。ブログというものに初めて記事を書きますので、緊張していますがよろしくお願い致します。

被害者が存在する事件では、被疑者・被告人の処遇にとって、示談ができたか否かが極めて重要なポイントとなることは、このブログの前の記事にも出ていますが、それを示す例を今日はお話ししましょう。

ある傷害被疑事件のことです。Aさんは、酒に酔って路上で暴れ、注意した人を殴って怪我をさせ、その人の車にも傷をつけたということで逮捕され、警察署に勾留されました。 早速接見して事情を聞いたところ、Aさんは、事件を起こしたこと自体、酔っぱらっていて、よく覚えていないとのことでした。 しかし、彼は、以前にも数回、酒に酔って同じようなことをして逮捕された経験があり、今回も、自分がやったことに間違いないと言います。 今までは起訴されずに済んでいましたが、今回はわからない。私は、とっさにそう思いました。 とにかく、被害者との間で、示談を進めなければなりません。私は、早速被害者である甲さんに電話をかけ、Aさんからの謝罪の意思を伝え、示談の話をもちかけましたが、甲さんの回答は、ノーでした。

しかし、ここであきらめる訳にはいきません。せめてAさんが謝罪文を書いて、それを甲さんに受け取ってもらうだけでもできないかと思い、私は、再度Aさんに接見しに行きました。
ところが、ここで私は驚くべき話をAさんから聞かされることになりました。
なんと、Aさんは、私との接見で甲さんとの示談を進める打合せをした後に面会に来た友人のBさんに、甲さんとの示談交渉を依頼しており、Bさんと甲さんとの間で、解決金として20万円を支払うということで、ほぼ話がついているというのです。
また、さらに驚いたことに、Aさんは、自分自身は覚えていないものの、事件当時、甲さんの他に、乙さん、丙さんという人にも、家のフェンスを壊す等の被害を与えており、彼らに対しても、Bさんが示談交渉中だとのことでした。

私は、事実を確かめるため、早速Bさんと連絡を取りました。また、甲さんにも電話したところ、確かに、私に対して示談に応じないとの回答をした後、Bさんが訪ねて来て、熱心に示談して欲しいと頼んできたため、応じたとのことでした。乙さんも、同じでした。ただ、丙さんは、被害感情が強く、今は示談に応じられないとのことでした。
私は、Bさんに、示談書の取り交わしや、領収書の受領及びそれらを私にファックスで送ってくれるよう頼み、甲さんと乙さんについては、彼らが告訴の取消手続きをして下さったことを確認しました。

そこで、私は、一連の経過について、担当検察官宛に報告書を作成し、Bさんがファックスで送ってくれた書類を添付して検察庁に送りました。
その結果、Aさんは、起訴されることなく、無事釈放されました。
ことほどさように、示談は大切なものです。このケースで、もし、全く示談が成立していなかったら、Aさんは起訴されていた可能性が高いと言えます。

もっとも、弁護士以外の方が被害者と示談交渉をする場合には、注意しなければならないことがいくつもあります。 例えば、被害者を示談に応じさせようと恫喝したり、執拗に食い下がる等ということはもってのほかですが、被害者の感情を無視し、被疑者の事情ばかりを述べ立てたがためにあと少しのところで示談が成立しなかったり、書類を取り交わすことを忘れたり、書類に不備があったために後で被害者との間でトラブルになったり・・・、といったミスで、せっかくの努力が実を結ばないことがあり得ます。

私も、正直、Bさんがどういう交渉をしていたのか全くわからなかったため、Bさんと連絡がついてからは、被害者からのクレームが出ることがないよう、かなり細かいアドバイスをさせていただきましたし、Bさんも忠実にそれを守って下さったからこそ、良い示談ができたのだと思います。

ご家族やご友人に示談交渉を依頼した場合でも、万全を期するために、是非弁護士にもご相談いただければと思います。
私達は、法律の専門家として、不備のない示談交渉を進めることができます。