薬物事犯など一部の犯罪を除き、多くの刑事事件では、犯罪の被害者になる人がいます。何気ない日常の中で、突然犯罪の被害に巻き込まれた被害者のダメージは計り知れないものがあります。
私自身、学生時代に車で旅行に出かけていたさなか、山の中で車上荒らしに遭ってしまったことがありました。110番通報をしても、パトカーが現場に到着するまで30分以上はかかるとのつれない返事。夕方の暮れゆく薄暗い山中、人通りも途絶えてしまったなかで、まだ近くに犯人がいるのではないかと思うと気が気ではなかったのを鮮明に覚えています。このときは、犯人に遭遇したわけでもなく、私自身が暴力を振るわれたりしたわけでもありませんでしたが、仮に自身が直接害悪を加えられていたらと思うと、犯罪の被害に遭うということの恐ろしさが身に染みました。

刑事事件における弁護士の仕事、というと、被疑者・被告人の弁護活動をする弁護人を思い浮かべられる方がほとんどだと思います。
でも、そのような犯罪被害者のサポートをするのも、弁護士の大切な仕事のひとつなのです。

先の車上荒らしでは、結局犯人は見つからず、盗まれたものも返ってきませんでした。
しかし、仮に犯人が判明して捕まった、などということになれば、当然、私は犯人に対して相応の処罰を受けてほしいと考えたでしょう(今でももちろんそう思っています!)。また、盗まれたものについては、きちんと被害弁償をしてもらわなければなりませんし、壊された窓の修理代だってばかになりませんでした。
でも、どうやって??
そんな犯罪被害者の代弁者として活動するのが、被害者の代理人弁護士の役割です。

わが国では、最近になってようやく犯罪被害者の保護が重要な課題として認識されるようになってきました。
平成16年には、「犯罪被害者等基本法」という法律が成立し、被害者らが被害を回復・軽減し、再び平穏な生活を取り戻すとともに、その被害に係る刑事手続に適切に関与できるよう法整備が進められているところです。もっとも、いくら手続が充実しても、被害に遭って心身ともに消耗し切っている被害者が、主体的に自身の権利利益を保護・回復するための行動を取れるとは限りません。そんなときに、刑事事件の手続について詳しい弁護士がそばにいれば、これほど心強いものはないと思います。

弁護士であれば、民事の代理人として、犯人に対し、損害賠償の請求を行うこともできますし、刑事裁判における被害者参加弁護士として、被害者が法廷で意見を述べたりする手続のサポートができる場合もあります。

「すべて犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する。」(犯罪被害者等基本法第3条第1項)。

犯罪の被害に遭ってお困りの方は、ぜひ一度弁護士にご相談くださいね。