弁護士をしていると、外国人の依頼者の弁護をすることもあります。外国人の弁護活動独自の特徴としては、言語通訳の問題などが思い浮かぶでしょうが、日本にそのまま在留し続けることができるのかという点も無視はできません。

 外国人の刑事事件における在留資格・強制退去の問題は、交通事故事案での運転免許の処分と同じく、行政処分として刑事処分とは別に科せられます。条文の文言上は「~できる」となっていて、処分を必ずしも下さなければならないわけではないのですが、近年この点は厳しくなる一方ですので、強制退去へ至るケースが多発しているそうです。

 刑事弁護で頑張って不起訴としてもらっても、入管の方で情け容赦なく強制退去とさせられることは、十分にあり得ます。

 以前、留学生が大学に無断でアルバイトをして、資格外活動で逮捕されたというケースを手がけたことがありました。このこと自体は、まま聞く話です。

 接見に行き、依頼者から話を聞くと、大学にはろくに行かず、性風俗のアルバイト中の検挙で逮捕勾留されたということなので、「これは、刑事処分がどうであれ、結局は強制退去かな。」と思いました。ともあれ、友人や大学と連絡を取り、嘆願書や、生活ぶり・学業についての陳述書や電話録取書などを作成してもらい、意見書を添えて検察に送ったところ、刑事の方は不起訴で終わりました。それでも、その時は、「早期に国外退去とするために、あえて不起訴としたのかな。」などと考えていました。

 依頼者は、検察での釈放後、待っていた入管職員によって直ちに東京入国管理局に移されました。しかし、それを聞いて、「早めに接見に行って、特別在留許可を求めるのか、求めるならウチを使うのか確認しなければならないな。」と準備していたところ、「なんか、職員がもう帰っていいと言って、そのまま外に出された。」という連絡がありました。その後は特に続きの話はなかったので、問題なく大学に復学できたのかと思います。

 このあたり、どういう経緯でお咎めなしとなったのかはよくわかりませんが、運のいいケースだったのでしょうか。それとも、案外「専ら」アルバイトをしていたわけではないとの認定だったのでしょうかね。