裁判傍聴に行かれたことはありますか?
地裁の刑事法廷に入ると、バーの内側、
正面に裁判官が座っていて、右側には弁護人。
そして、左側の席にいるのが、検察官です。

テレビの刑事事件でも、「検察側の主張は・・・」など、
検察官が登場するのはほとんどが裁判の場ですよね。
確かに、検察官の重要なお仕事のひとつは、
法廷で被告人の罪状を主張し、求刑意見を述べるもの。
でも実は、これは検察官の仕事のほんの一部に過ぎないのです。

今回は、弁護士、裁判官に並ぶ法曹三者の一角をしめる、
「検察官」のおしごとについて紹介します。

検察官の最も重要な仕事は、「被疑者の処分を決定すること」。
警察官が犯罪の嫌疑ありとして捜査し、
書類や身柄を送致してきた刑事事件の全てについて、
起訴して刑事裁判を求めるかどうか、その終局的な処分を決めるものです。

具体的には、事件送致を受けた検察官は、当該事件の一件記録を精査し、
補充捜査が必要であれば警察に指示を出し、
あるいは自ら取調べを行うなどして、事件の全容を把握します。
その上で、犯罪の軽重や被害者の被害感情、
被疑者の態度や反省の姿勢の有無、その他多角的な情況に照らして、
被疑者を起訴するかしないか、起訴するとして略式手続に付するか否かを決定します。

ちなみに、平成23年の犯罪白書によると、
平成22年に検察官が終局処分を行ったのは157万7369件。
そのうち、正式起訴されたものは、たったの10万9572件
(少年事件の逆送事件は除きます)。
巷によく言われる、「有罪率99.9%」。
この数字に賛否はあるでしょうが、相当数の事件が、この段階で
検察官の判断により篩い分けられていることを考えれば、
起訴された事件で有罪と判断される確率が高いこと自体は
さほど不可思議とまではいえないですよね。

「起訴する」との判断をした事件について、
検察官が次に行う仕事は、公判の維持。
冒頭に述べた、私たちにある意味最も身近な役割です。

検察官は、各都道府県に分かれた検察庁に配属されて仕事をしていますが
(テレビなどで、よく「○○地検」などと言われているものです)、
主に検察庁の規模などによって、先ほどの捜査担当検事が公判も担当する場合と、
捜査担当の検察官と公判担当の検察官が異なる場合とがあります。
前者を指して、「主任立会制」などと呼ばれたりします。

公判の中身を説明し始めると長くなるので、ここでは省きます。
検察官のお仕事、その他に重要なものとして、「刑の執行指揮」があります。
公判廷で裁判官により判決され確定した被告人に対する刑罰を実施する役割です。

現在の刑法で決められている刑罰は、極刑である死刑に加え、
「科料・罰金」といった財産刑と、
「拘留・懲役・禁固(および罰金刑に代わる労役場留置)」という自由刑のみ。
たとえば懲役刑に処せられることが確定した事件では、
被告人(正確にはこの時点で既に「受刑者」ですね)が保釈されていれば収監し、
収容する刑務所を選択して刑に服させるという一連の手続を行います。
実際の受刑者の処遇は、このブログ執筆者の一人の原職である刑務官の仕事。
検察官は、自由刑の受刑者を刑務官に引き渡すまでを担当しているわけですね。
その他、略式命令がなされた事件で、仮納付手続を行うのも検察官の役割です。

いかがでしょうか。
検察官の役割が、思いのほか幅広いことがお分かりいただけるかと思います。
刑事事件の他にも、実は民事事件で出番があったりする検察官。
不在者財産管理人選任申立ての請求権者であったり、
死亡した人に対する認知請求訴訟の被告となったり・・・。
「公益の代表者」として、検察官の役割は大変幅広いのですね。