本日は、精神障害者の犯罪と処遇制度の概要について述べます。

 そもそも、精神障害者とは、統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患を有するものをいいます。
 そして、これらの者が犯罪行った場合には、①刑法39条1項、2項②精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)③心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(医療観察法)が関与してくる場合があります。

 ここでは、精神保健福祉法について述べます。
 精神保健福祉法は、精神障碍者の医療保護及び福祉の増進を目的としたものです。
 かかる法律で重要になってくるのは入院制度です。
 精神保健福祉法上の入院形態には①本人の同意に基づく「任意入院」②本人の同意がなくても、保護者の同意があるときになしうる「医療保護入院」③本人、保護者いずれの同意も必要としない「措置入院」の3種類がある。

 ③の措置入院制度は本人または家族の同意も必要としないことから強制力は強いものと言える。
 通報を受けた知事は、その者が精神障害者であり、かつ、その精神障害のために「自傷他害のおそれ」があると認められることについて、2人以上の指定医の診察結果が一致したときは、その者を国公立の精神病院その他の指定病院に入院させることができると規定されています。
 上記規定の要件から明らかであるように、他人を傷つける場合だけではなく、自分を傷つけるおそれがあるような場合にも適用される点に注意が必要である。自分は他人を傷つけようとしていないと主張したとしても自分自身を傷つけようとした場合には、この規定が適用されることになります。

 以上のように本人の意思とは無関係に措置入院を行い、その審査に裁判所が関与していなことから、人権保障の観点から問題があるのではないかという点が措置入院制度の問題点の一つです。

弁護士 坪井 智之