第3 通常の手続との異同
1 (異)書面審理
みなさんもニュースやドラマで見たことがあるかとは思いますが、通常の手続においては、被告人が裁判所に出廷し、裁判官の面前で検察官や弁護人が証拠を提出したり、被告人自身が自身の主張・意見を述べることになります。
これに対して、略式手続は書面審理のみで行われます。ニュースやドラマにおいて映し出されるような裁判は行われません。そのため、公開の法廷において自身の姿をさらす必要がないというメリットがありますが、逆に裁判官に対して自身の意見等を述べる機会が与えられないデメリットもあります。
略式命令が出された後に、「やはり通常の裁判を受けたい」ということであれば、略式命令が告知された日から14日間の間に正式裁判の請求をすることで、上述の通常の手続がなされることになります。
2 (異)判断までの期間
略式手続においては、原則として請求の日から遅くとも14日以内に略式命令が出されることとなっておりますので、一般論として通常の手続に比べて早く判断が下されることになります。
3 (異)刑罰
上述しましたように、略式手続においては、100万円以下の罰金刑又は科料しか科すことができません。これに対して通常の手続が執られた場合、罰金刑はもちろんのこと、懲役刑等の刑罰も科すことができることとなります。
略式手続が執られることになった場合には「刑務所に入らないといけないかも」といった不安からは解放されることになります。
4 (同)前科
なお、略式手続によるものであろうと、それにより罰金刑等が科された場合、それは前科となります。
公開の法廷に出廷することもない手続なので、勘違いされる方がいらっしゃるとは思いますが、前科が残ってしまうことにはなってしまいますので、例えば無罪を争う場合等には、略式手続に同意するべきではないことになります。
第4 最後に
以上、簡単にではありますが、略式手続についてお話をさせていただきました。
略式手続は簡易迅速な手続であることや、公開の法廷に赴く必要がない点等で被疑者・被告人の方にとってメリットもありますが、裁判官に対し直接話すことができないといったようなデメリットも確かに存在します。
そのため、検察官から略式手続を執るための説明を受け、同意を求められることになった場合には、弁護士に相談・打ち合わせをするなどして、安易に略式手続に同意しないことが肝要かと存じます。