第1 強姦罪を「強制性交罪」に変更?

 現行刑法典の強姦罪等の性犯罪処罰規定が、強制性交等罪という罪名に改正されるというニュースが世間を賑わせております。1907年に制定されて以来、実に100年以上の間変わってこなかった性犯罪処罰規定がどのように変わるのでしょうか。罪名が変わるだけなのでしょうか。強制性交等罪の「等」には何が含まれるのでしょうか。

 今回の法改正について、本稿では現行刑法を解説しつつ、次稿で改正が予定される強制性交等罪について、お話していきたいと思います。
 強姦罪という犯罪の性質上、性的な文言が多数出てくることにご留意ください。

第2 現行刑法の強姦罪について

1 強姦罪が成立するためには?

(1)強姦罪が成立するための要件は、客体の年齢によって区別されます。
 13歳以上の女子に対しては、以下の4つの要件が必要です。

①「暴行又は脅迫を用いて」
② 意思に反して
③「女子を姦淫した」
④ 故意・性的意図

 一方で、13歳未満の女子に対しては、①「暴行又は脅迫」を手段とするか否かを問わず、また、②女子の同意の有無にかかわらず、姦淫することで成立します。したがって、13歳未満の女子に対しては、以下の2つの要件があれば、強姦罪が成立します。

③「女子を姦淫した」
④ 故意・性的意図

(2)①「暴行又は脅迫を用いて」とは?
「暴行又は脅迫」の程度は、「相手方の抗拒を著しく困難ならしめる程度のもの」で足ります(最判昭和24年5月10日刑集3巻6号711頁)。
 犯行を抑圧するに足る程度が求められる強盗罪(236条)の暴行又は脅迫よりも緩和されている点にご注意ください。

(3)③「女子を姦淫した」とは?
 姦淫とは、性交(膣内に陰茎を入れる行為)をいいます。男性器の女性器への一部挿入により既遂となります(大判大正2年11月19日刑録19輯1255頁)。
 この点は、法律家の考える性交というものと一般社会の人が考える性交というのは必ずしも一致するものではないと思われますが、法律上はそのように解釈されております。

2 男性も強姦の被害者になるのか?

 女性が暴行又は脅迫をされ、意思に反して姦淫された場合、強姦罪が成立することは皆さんご存知のことかと思います。この場合、強姦罪を犯した者には、3年以上20年以下の懲役刑が科されることになります。

 では、男性が女性から脅迫されるなどして陰茎を膣内に挿入させられた場合や、強制的に肛門性交(肛門内に陰茎を入れる行為)された場合など、男性が被害者である場合でも強姦罪は成立するのでしょうか。