弁護士 楠見 真理子

これは、私が検事だったときに扱った案件です。

被害者の女性が知人の男性の部屋で強姦されたということでした。

被疑者は、あくまで合意があったと否認していました。

しかし、被疑者の女性は、自分の彼氏の友人だから、安心して部屋にあがった、まさか、乱暴されるとは思いもしなかったと詳しく話していました。

私としては、被害者の話していることを信じて、被疑者に厳しく取調べにあたっていました。

ところが、満期の直前になって、被害者が被疑者の処分がどうなるか知りたいと電話をしてきました。

私が起訴になると思いますというと、話を聞き直してほしいと言ってきました。

そこで、あらためて、被害者を呼んで、話を聞いたところ、実は、被疑者とは合意があったと話し始めました。

驚いて、なんで強姦されたなどと言ったのかと聞いたところ、被疑者と肉体関係をもったことを彼氏に知られて、浮気をしたのかと問いただされて、思わず、乱暴されたと言ってしまい、彼氏に警察に言うように言われて、強姦されたと警察に話してしまったということでした。

本当に驚きました。

当然、被疑者は、不起訴にしました。

当時の同僚によると、一方的に別れると言われて、強姦されたと女性が主張した事案があったそうです。

男女のトラブルが原因で、ありもしない犯罪が発生する、よくよく注意するようになりました。