男性の読者であれば、キャバクラに行く人も少なくないと思いますが、お酒の席とは言え、過度な身体接触はトラブルになりますので注意が必要です。

 今回ブログで紹介する事件も、キャバクラでの身体接触がトラブルに発展したケースです。
 ただ、この事件では、たまたま私の依頼者(被疑者)が、他のキャバ嬢を通して、カラダを触られたキャバ嬢が被害届を警察に提出していたという情報を入手できたため、逮捕・勾留前の受任となりました。

 被疑者の身柄が取られる前に受任できたのは幸いでした。

 まず、弁護人選任届を所轄の警察署に送付。これには担当の刑事も驚いたでしょう。逮捕もしていないのに、弁護人がついてしまったのですから。実際に、担当の刑事さんも、「どうして捜査情報が漏れているのか」と気にしていました。

 そして、次に私がしたことは、逮捕された場合に捜査機関によって、不当な自白強要がなされることをけん制するために、弁護人作成の被疑者調書を作成し、所轄の担当刑事に報告しました。
 これは何のためにするのかというと、先だって、弁護人が被疑者に有利な内容の供述調書を作成しておけば、後日、これと大きく内容が異なる供述調書を警察が作成しずらくなるからです。こうすることにより、自白の強要をかなりの程度予防することが出来ます。

 その上で、私は、警察署を通して、被害者女性との示談を希望する旨伝えてもらいました。
 そもそも本件が強制わいせつに該当するのか争う余地は十分にあったのですが、万が一に備えて示談の準備はしておく必要があるからです。性犯罪の多くは、示談が成立していれば、裁判にかけられることはありません。

 そして、やらなければならないことはまだあります。当該キャバクラの他のホステスから事情聴取です。お客がキャバ嬢の身体を触った際の行為態様、接触時間、接触した経緯、周囲の状況、キャバ嬢の反応などを調査しないと、その行為に犯罪性があるか分からないからです。

 調査の結果、被疑者は同店の常連客で、常にVIPルームという個室を使用し、以前からキャバ嬢の身体を触っていたということが判明しました。そればかりか、VIP客に対しては、店側もキャバ嬢も客が身体を触ってくる行為を許してきたという事情が明らかとなったんです。
 そうすると、客の認識としては、触られることについて、キャバ嬢の同意があると認識していることになるから、強制わいせつ罪は成立しないことになります。被害届を提出していたキャバ嬢が入店したばかりの女性で、そのあたりの事情をよく理解していなかったためにトラブルに発展したのでした。

 このような弁護人の捜査活動によって判明した事情を担当刑事に説明しました。弁護人としては、被疑者が逮捕された場合には、無罪を主張する方針がある旨伝えたのです。
 その結果、捜査機関は被疑者の身柄を確保することを躊躇するようになり、捜査が進展しなくなりました。逮捕状を請求している様子もありませんでした。その間に、被害者側と示談交渉を遂行し、示談をまとめて事件終了となったんです。
 本件の場合、示談をまとめないで戦うという選択肢もありえたのですが、被疑者がそれでは安心できないと言うので、示談をまとめました。

 お酒の席での行為が思わぬトラブルに発展することがあるので十分ご注意してくださいね。

 本件では、逮捕前に弁護士に依頼したことが幸いでした。
 性犯罪は、えん罪も多いのですが、一度逮捕されてしまうと、警察のストーリーで調書も作られてしまうし、勾留も長期化して会社からも解雇されるなど、被害がどんどん拡大していってしまいます。

 なので、こういった犯罪ほど、いかに早く弁護士に頼むかが運命を大きく左右するので、日頃から気軽に相談できる弁護士がいることが望ましいと思います。