本日は、公然わいせつ事件について書きたいと思います。

 そもそも、公然わいせつ罪の構成要件は、①公然性 ②わいせつ行為の二つです。
 具体的には、①「公然」とは、不特定または多数人が認識できる状態をいいます。
 現実に不特定または多数人が認識したことを要しないと考えられているため、密室内で少数の者に性器等を見せる場合であっても、それを反復すれば公然性を満たします。
 ②「わいせつの行為」とは、「その行為者又はその他の者の性欲を刺激興奮又は満足させる動作であって、普通人の正常な性的羞恥心を害し善良な性的道義観念に反するもの」をいいます。これは、現実に普通人が性的羞恥心を抱いたことは必要ではなく、性的羞恥心または嫌悪感を抱かせ、公衆の健全な性的感情を害する性質・程度のものであれば足ります。

 公然わいせつ罪が守っている利益は、公衆の性風俗を保護するものであり、この点で強制わいせつ罪のように個人の性的自由を保護するものと異なります。
 しかし、公衆の性風俗の保護といっても、実際上は被疑者の性器等を見てしまい不快感を感じる等個々の被害者がいます。
 弁護士としては、被疑者段階でご依頼頂いた場合には、迅速に対応し、特定できている被害者と示談を行うことが重要だと考えます。

 あくまで公衆の性風俗の保護が守るべき利益である以上、個々の被害者の方との示談は意味がないようにも思えますが、仮に実際に不快感などの被害を受けた方が特定でき、その方だけでも示談を行うことで検察官も不起訴処分とすることも検討し得ると考えられます。
 不起訴処分と起訴処分(略式を含む)では、前科に残るか否かで大きくことなります。不起訴処分になる可能性が少しでもある以上、全ての被害者と示談ができるように試みる必要があると私は考えます。

 その他、性犯罪では最も不安視されるのは、再犯を行う可能性があることです。そのため、再犯防止のプログラムを受けることを促すなど、弁護人としてできる提案をすべて行い、不起訴処分になるように努めるべきだと考えます。