人が何かの犯罪をして、犯人として警察に逮捕された場合、警察である程度の取調べを受け、その後検察に送致されます。
 検察官は、警察から事件を受け取った後、訴訟になった場合には犯人とされた人の犯罪を漏れなく立証できるか、犯罪の状況などから見て起訴をしなくていいと思えるような事情があるかなどを考慮し、その人を起訴して訴訟の場に出すかどうかを決定します。

 検察官に起訴されると、事件は原則として公開されます。
 この場合、もしあなたや身近な人が起訴されたのであれば、私どもにご依頼ください。
 また、自分とは関係が無いけれども見に行ってみたいというお考えであれば、裁判所の玄関付近に、その日の訴訟でどんなものがありますという概要を掲載した日誌が置かれていますから、そちらをご参照ください。

 では、検察官が「起訴しない」という決定をした場合にはどうなるのでしょうか。
 その、犯人とされる人が、ほかにもたくさんの事件で起訴されていて・・・というような場合でなければ、たいていは、そこで事件終了です。
 しかし、なかには、かかっている事件が1件だけであって、しかもその1件につき検察官が「起訴しない」という決定をしたにもかかわらず、犯人とされている人がなおも自宅に帰れないという特殊なルートが存在します。
 「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」(「心神喪失者等医療観察法」、または「医療観察法」と呼ばれます。)の場合です。

 検察官は、犯人とされる人の犯罪を、訴訟の中で立証できるかどうかを考える際、その人の事件時の心理状態が、物の善悪を全然判断できない・自分で自分をコントロールできないような状態(心神喪失状態)か、それに準じるような状態(心神耗弱状態)ではないかも考えます。
 そして、検察官が、犯人とされている人について、心神喪失状態又は心神耗弱状態のために不起訴にすると判断した場合には、明らかに治療の必要性がないと認められる場合等を除いて、医療観察法に基づいて、その犯人とされる人に治療を受けさせるための申立てをしなければいけません(同法33条1項ないし3項)。
 そして、その申立てがあると、裁判所は犯人とされる人(申立後は「対象者」と呼ばれます。)に対して、鑑定入院命令を発します(同法34条1項)。
 したがって、この場合は、不起訴処分と同時に病院に行くことになるので、自宅に帰れないということになるわけです。

 対象者を鑑定入院させている間に、裁判所が主導となって、検察官・付添人弁護士・保護者・精神保健参与員・鑑定人・保護観察所調査官たちがそれぞれ連携しながら対象者と接し、犯罪行為(対象行為)が対象者によって行われたのかどうか、対象者に治療が必要かどうか、治療が必要とすれば入院がふさわしいのか通院がふさわしいのかといったことが、申立てから2か月程度の短期間で決められてしまいます。
 この手続きは、訴訟と違って非公開ですから、手続きに関与した者しか中を見ることはできません。

 医療観察法に基づく手続きはめずらしいものですが、私たちの事務所にはこの手続きに関与した経験のある弁護士も在籍しています。何かお悩みの場合には、私たちの多様な経験を生かしてご相談をお受けすることが可能です。
 ぜひご相談ください。