最近、「ごみ屋敷」がワイドショーなどでクローズアップされているのをよく目にします。ニュースになるようなケースでは、公衆衛生への重大な問題であるにとどまらず、近隣の不動産価格や賃料相場にも大きな影響を与えますので、周辺の住民にとってはまさに死活問題。しかし、「ごみ屋敷」ほどに大規模なものではなくても、ごみの廃棄をめぐるトラブル、実は結構日常頻繁に起こっている問題だったりします。先日も、ごみの排出をめぐって隣家と揉めた末に警察沙汰となり逮捕された、という事案の刑事事件を担当したばかりです。

 ごみの廃棄について規定しているのは「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」、一般に「廃棄物処理法」と呼ばれている法律です。廃棄物処理法と聞くと、産業廃棄物に関する規定がずらりと並んでいるように思われがちですが、実際はごみに関する全般的網羅的な法律となっています。

 たとえば、ごみの不法投棄。山間の道路を走っていると、道端に家電などのごみが捨てられているのを見たことがある方は少なくないでしょう。言うまでもなく、あのようなごみの投棄は違法かつ刑事罰の対象であり、廃棄物処理法25条により、5年以下の懲役または1000万円以下の罰金が科せられてしまう可能性があります。他方、かかる規律が産廃のみならず、一般廃棄物についても同様に定められていること、投棄したごみの量や内容・場所等にかかわらず処罰対象であることについては、広く知られているとは言えないように思います(同法6条)。極端にいえば、道端にタバコの吸殻をポイ捨てするだけでも違法、法6条・25条によって刑罰を科せられてしまう可能性もあるわけです。

 では、いわゆる「ごみ屋敷」について、廃棄物処理法は規律を設けていないのでしょうか。
 よく「ごみ屋敷に関しては法律が立ち入れない問題だ」なんて言い方をするコメンテーターがいたりしますが、実は廃棄物処理法にも、きちんと規定が存在します。すなわち、同法5条は、占有使用する土地や建物を清潔に保つよう求めており(1項)、さらには、建物内を大掃除すべきことまで義務付けられているのです(3項)。
 このような規定は、廃棄物処理法が制定される前に存在した「清掃法」という法律に由来します。戦後まだ衛生状態が十分に良くなかった頃、行政が主導して大掃除をしましょう、と触れ回っていた時代があったのです。役所の職員が家々を回って実施状況を確認し、合格した家に「検査済証」を交付していた地域もあるといいますから驚きです。
 今では、公務員が大掃除が終わったかどうか確認して回るなんてもちろん聞いたことがありませんし、廃棄物処理法にも大掃除の義務を怠ったことによる罰則は設けられていません。
 さらに言えば、廃棄物処理法といえども溜め込んだごみを強制的に処理することは想定していませんから、いずれにせよ「ごみ屋敷」対策は市町村や都道府県が定める条例に委ねざるを得ないのが実情です。

 さまざまなトラブルを引き起こしかねないゴミ問題、紐解いて行けば色々と奥が深くて興味深いものですね。