被疑者・被告人が私的に弁護人を選任しようとする場合、個人的に弁護士の心当たりがなければ、弁護士会に私選弁護人の選任の申出をすることができます(刑事訴訟法31条の2第1項)。申出を受けた弁護士会は、それに対し、速やかに所属する弁護士中より私選弁護人となろうとする者を紹介しなければなりません(同条2項)。
これが、私選弁護人選任申出制度です。

だいたい、前回書きました当番弁護制度と、この私選弁護人選任申出制度とは、重ねて実施・運用されている場合が多いと思われます。つまり、当番弁護士として割り当てられた弁護士が、私選弁護人の選任の申出があった場合にも出動するということです。

私選弁護人選任申出制度はあくまで「私選」弁護人を紹介するものです。申出に対し派遣された弁護士には、受任義務はありません。弁護人となるかどうかは、報酬等の条件が折り合い、双方の意思の合致により契約が成立するか次第です。
申出に対して派遣されたものの、受任に至らなかった場合には、弁護士の方から不受任通知を差し入れます。

なお、国選弁護人制度を利用するためには、まず資力要件、すなわち被疑者・被告人が一定程度未満の資産しか有していないという点が問われます。一定程度の資力がある被疑者・被告人については、まず私選弁護人選任の申出を行ない、その結果選任がなかった場合でなければ、国選弁護人制度を利用できません。