こんにちは。今回は、交通事故の損害賠償請求において問題となることが多い東洋医学(柔道整復・鍼灸・あん摩・マッサージ・指圧等)による施術費の請求について解説したいと思います。

 まず、治療費一般については、必要かつ相当な実費全額について損害賠償請求することができます。したがって、東洋医学による施術費についても、必要性と相当性が認められれば、当然に治療費を損害賠償請求することができます。

 しかし、保険会社に対し、東洋医学による施術費に対する保険金の支払いを請求しても、医師の指示がなければ支払うことができないという対応をされることが多く、そのため、東洋医学による施術費の請求が問題となるのです。

 では、医師の指示がなければ、東洋医学による施術費の請求は全く認められないのでしょうか。

 裁判例には、柔道整復師による治療につき、医師の指示によるものではないものの、被害者が治療により相当程度以上の症状の回復軽減を感じていることが認められるとして、施術費用を交通事故の損害として認めたもの(神戸地判平7.9.19交民28・5・1358)、頸部捻挫の被害者について、医師の指示を受けずに接骨院で施術を受けた場合に、治療効果があがっていたとして、接骨院の施術費を交通事故の損害認めたもの(東京地判平8.12.18交民29・6・1809)などがあります。

 よって、医師の指示がない場合であっても、治療の効果が認められる場合には、東洋医学による施術費の請求は認められるといえます(なお、請求が認められた場合においても、施術費の全額については認めず、一部のみ認める裁判例もあります)。

 したがって、交通事故による傷害の治療のために、東洋医学による施術を受けたものの、医師の指示がないこと等を理由として、保険会社から保険金を支払ってもらえないという場合には、訴訟において、施術の効果を主張立証することで支払を受けることが可能かどうか、一度、専門家である弁護士にご相談されることをお勧めします。