皆様、こんにちは。
今回は、入通院交通費についてみてみたいと思います。
被害者の入院・転院・退院、通院のために要した交通費です。
この被害者が入通院のために支出した交通費は、原則として実費の全額が損害として認められる。
そして、損害の算定において基準となるのは、原則として、バス・電車等公共交通機関の利用料金です。
自家用車を利用した場合には、自家用車によることの必要性・相当性を要し、ガソリン代、高速料金、駐車料金などが損害となります(ガソリン代の他、高速道路料金、駐車場料金が認められた例として神戸地判平成7.8.2、東京地判平成7.8.29など)。
タクシー利用が認められるのは、受傷の部位、程度、などから歩行困難な場合や、電車やバス等の公共交通機関がないなどの交通事情がある場合などで、タクシー利用に必要性や相当性が認められないときには、電車やバスなど公共交通機関によった場合の金額が限度となります。
裁判例としては、右大腿骨解放骨折、右脛骨高原骨折等の傷害を受けた被害者によるタクシーによる通院交通費約270万円を認めた例(東京地判平成14.3.22)や、病院への通院に公共交通機関を利用した場合には、自宅から駅まで徒歩で1時間かかる場合に、タクシーを利用することはやむを得なかったとしてタクシーによる通院費約235万円を認めた例(大阪地判平成7.3.22)、などがあります。
また、通院以外に治療中の通院交通費が認められたものとして、職場復帰の訓練のためのタクシーでの通勤費を認めた裁判例(東京地判平成17.2.15)があります。
以上のように、タクシー利用など公共交通機関の利用水準を相当程度超える交通手段を用いた場合の交通費を請求していく場合には、受傷の部位・程度、年齢や交通機関の便などの事情など、当該交通手段を利用する必要性・相当性を主張していくことが必要となる場合があります。
弁護士 髙井健一