事案

 本件は、平成18年6月22日に、信号待ちの原告車両に、被告が、前方不注意により被告車両を原告車両に追突させたところ、原告に腰痛右中環指のしびれ等の後遺傷害が残存し、自賠責保険の後遺障害等級14級9号の認定を受けた事案である。
 なお、本件では、原告は事故以前から、腰痛等により整形外科等に通っていた。

 このような事案において、裁判所は

「① 原告は,本件事故直後から平成19年1月に至るまで,一貫して,頚部痛,頭痛及び腰痛等を訴えており,これらに対する治療が続けられていたこと,② 本件事故後に原告が病院で診療を受けた際には,腰椎のX線検査で,腰部については変形性関節症が強いと診断されたが,頸椎のMRI検査では,明らかな圧迫所見はないと診断されたことからすれば、原告には,本件事故前から,腰部に既往症があったというべきであるが,前記認定の事実によれば,原告の治療期間が,腰部の症状のみによって,長期化したとみることはできない上,本件事故から症状固定日までの原告の治療期間も7か月強であることに照らせば,原告の症状が,既往症の存在によって特に遷延化したとまではいえない。」

旨判示し、素因減額を採用しないとした。

 上記裁判例では、「事故前から、腰部に既往症があったというべき」と、既往症の存在を認めた上で、既往症がその損害に影響を与えたか否かを検討し、素因減額を否定していることが参考になると思います。