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 今回は、裁判例(神戸地裁平成24年2月28日判決・自保ジャーナル第1870号)をご紹介したいと思います。

 56歳男子の被害者Xは、事故前、腰の手術を受け、「腰椎椎間板ヘルニア」の傷病名で入院加療等もあり無職であったところ、それから約5か月後、原動機付自転車を運転、信号待ち停車中、加害者Y運転の普通貨物車に追突され、頸椎・腰椎捻挫等を負ったことから、翌日から入院、約2年10ヶ月後に症状固定したとして、Yに対し、約2200万弱の賠償金の支払いを求めて訴えを提起しました。

 本件では、主に事故と事故後の傷害との間の相当因果関係の有無が争点となりました。

 すなわち、原告である被害者が、事故後の傷害はいずれも事故に起因するものであると主張したのに対し、被告である加害者は、本件事故による受傷が重篤なものでなく、原告である被害者に既往傷害があったことに鑑みれば、本件事故とXの傷害との間の相当因果関係は相当に限定されるべきであると反論しました。

 これに対し、裁判所は、「本件事故により、頸椎・腰椎打撲捻挫、右肘右足関節部打撲捻挫の傷害を負い、その結果、就労等に一定の支障をきたしていたことは認められるところ、症状は、本件事故後生じていたものであるのに対し、本件事故以外の事象がその原因となっていることをうかがわせる証拠も認められないことからすると、上記症状は本件事故に起因して生じたものといえる」とし、約3年弱の入通院期間のうち、事故から約半年間を経過するまでの間に生じた入通院治療は、事故との間に相当因果関係のある損害であるとして、その限度でYの賠償責任を認めました(認定額約770万円)。

 本裁判例は、被害者が事故前から既往傷害を持つ場合において、事故後の症状と事故前の既往傷害との因果関係が必ずしも明確でないとき、限定こそかかるものの、一定の範囲で相当因果関係が認められる場合があることを示したものとして、実務上意義を有するものと思われます。