こんにちは。今回は、交通事故により高次脳機能障害を負った被害者について、定時制高校を卒業したり、一人で買い物をできたりすることから、後遺障害は5級2号と認定した裁判例(広島高裁松江支部平成16年11月5日判決・自保ジャーナルNo.1577)をご紹介します。

 今回ご紹介する裁判例の事案では、交通事故にあった被害者は事故により脳挫傷、びまん性軸索損傷等の傷害を負い、その結果、後遺障害等級認定においては3級3号の認定を受けていました。(後遺障害3級3号に該当する後遺障害とは、神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないものとされています。)

 原審(松江地裁平成15年4月17日判決)は、後遺障害等級認定と同様に被害者の高次脳機能障害は3級3号に該当すると判断しました。

「自賠責保険の後遺障害認定においては3級3号と認定されているが、高次脳機能障害による後遺障害は、定時制の工業高校に通学し、卒業していること、一人で徒歩あるいは自転車に乗って外出し、買い物をすることができること等のⅩの状況からすると、就労可能性を否定することはできず、Ⅹの後遺障害等級は、特に軽易な労務以外の労務に服することができないものとして、5級2号に相当するものであると認めるのが相当である。」

としました。

 上記判例から明らかなように、自賠責保険の後遺障害認定は損害賠償請求訴訟における後遺障害の程度を認定する際に参考にされるものではありますが、訴訟において自賠責保険と同様の判断がなされるとは限りません。

 本件は、自賠責保険の後遺障害認定よりも損害賠償請求訴訟における後遺障害の程度の方が軽いものであると判断されましたが、当然、逆のケースもあります。

 交通事故被害にあわれた方で、自賠責保険の後遺障害認定に納得できず異議申立てを行い同様の判断がなされた場合であっても、訴訟を提起すれば十分に争いうるものである場合もありますので、そのような場合は、一度、専門家にご相談いただくのが良いと思います。