皆様こんにちは。

 今回と次回にわたり、将来介護費についてみてみたいと思います。

 将来介護費とは、被害者に対する症状固定後の付添費あるいは介護費用をいいます。

 医師の指示や症状の程度により必要があれば被害者本人の損害として認められ、通常平均余命までの金額が算定されます。

 この将来介護費については、裁判基準・弁護士基準である赤い本(2011年版)16頁では「医師の指示または症状の程度により必要があれば被害者本人の損害として認める。職業付添人は実費全額、近親者付添人は1日につき8000円。ただし、具体的看護の状況により増減することがある。」とされています。

 親族付添費の日額については、おおむね、上記の基準に沿った運用がなされているといえます。

 他方、職業介護費については、将来介護費の実費全額が認められず、相当な範囲に限定される場合があります。平成12年4月から実施されている介護保険制度によって介護保険適用対象者の介護費が大幅に値上がりしたために、介護保険適用外の者についても、それに合わせる形で介護費が大幅に値上がりしたことにより、将来介護実費が高額になる一方、長期間にわたる将来の介護費は将来の事情の変動が予想されるためにその算定が困難であるという面があるからです。

 このように将来の介護費用については、高額の介護費用が立証された場合でも、将来の介護保険制度自体の問題や、今後はより廉価な介護施設や介護サービスが充実する可能性があるなどその損害額の算定が難しい面があるため、損害の控え目な算定という観点から、実費の相当な範囲で認めるのが妥当とされる場合がありますが、この相当な範囲についても約7割や8割を認定する裁判例もあります。

 近時の裁判例では、将来介護費については、日額1万8000円ないし2万円程度を認めるものは珍しくなく、次回みる東京地裁平成15年8月28日判決のように2万円を超える日額を認める裁判例もいくつもあります。さらに、排泄障害、高次脳機能障害等(1級3号)の男児(固定時7歳)の事案では、母67歳以降の職業介護人で日額3万円が認められています。

 将来の介護費用の請求では、予測困難な数十年後の金額予測等にならざるを得ないことから控え目な算定をしようとする裁判所に対して、被害者の後遺症の程度及び介護の必要性を立証したうえで、被害者の将来介護のためにはいかに当該損害額が必要かという蓋然性の立証を十分にしていく必要があると思われます。

 次回は、この将来の介護費につき、職業付添人が介護を行う期間について、日額2万4000円とかなり高額の介護費用を認容した東京地裁平成15年8月28日判決をみてみたいと思います。

弁護士 髙井健一