こんにちは。名古屋支部の弁護士上辻遥です。

 今日のテーマは「ペットと交通事故」です。このブログをご覧の皆様の中にも、ペットを飼っている人がいらっしゃると思います。かわいいペットを車に乗せてドライブ、ということもあるのではないでしょうか(余談ですが、私も実家で犬を飼っていて、よく車に乗せます。)。そんなドライブ中に交通事故が起き、ペットが負傷したり死亡した場合(考えただけで悲しいですね・・・)の損害について綴っていこうと思います。

2 治療費等について

 まず、前提として、ペットは動物で、民法上「物」(民法85条)として扱われます。物が毀損した場合、原則として時価相当額が因果関係のある損害となります。この原則を貫くと、交通事故でペットが負傷ないし死亡した場合に請求可能な損害額はそのペットの時価額のみということになりそうです。

 しかし、ペットはただのモノと割り切れない面があります。飼い主さんは家族の一員としてペットに愛情を注いでいるはずです。そんな飼い主さんは、交通事故でペットが負傷した場合、治療費等を相手方に請求したいと考えると思います。

 裁判例をご紹介します。

名古屋高裁判決 平成20年9月30日

 原告車両に被告車両が追突し、原告車両後部に乗っていた原告の飼い犬(ラブラドールレトリバー)が負傷し、腰椎圧迫骨折に伴う後肢麻痺等の傷害を負いました。

 裁判所は、愛玩動物のように家族の一員であるかのように扱われているものが負傷した場合の治療費等は、命を持つ動物の性質上、当該動物の時価相当額に限られるとすべきではなく、当面の治療や生命維持に必要不可欠なものについては社会通念上相当と認められる範囲で不法行為と因果関係がある損害と解すべきと判断しました。そして、裁判所は最終的に、治療費(光線治療費等)、車いす整作料、慰謝料(後述します。)、弁護士費用を因果関係のある損害と認定しました。

 この裁判例によれば、当面の治療、生命維持に必要不可欠であるという要件を満たせば時価相当額に加えて、治療費等を請求できるということになります。

3 慰謝料について

 前記の裁判例で、裁判所は、飼い犬が負傷したことで飼い主が負った精神的苦痛に対する慰謝料(50万円)を認めました。

 裁判所は、愛玩動物が家族の一員であるかのように飼い主にとってかけがえのない存在であることは公知の事実であるとし、かかる動物が交通事故という不法行為により重い傷害(上記事案では、後肢麻痺、排尿排便障害、膀胱炎、褥創)を負ったことによる飼い主の精神的苦痛は社会通念上、合理的な一般人の被る精神的損害といえると判断しました。

 以上のように、ペットが負傷、死亡した場合、時価相当額以外にも治療費、慰謝料等を事故の相手方に請求することは可能なので、交通事故にペットが巻き込まれた方はぜひご相談ください。ただし、上記裁判例では、ペット用のシートベルトを原告がしていなかったことを理由に1割の過失相殺がされています。皆さん、わんちゃんにもぜひシートベルトをつけてあげてください。

弁護士 上辻遥