重度の後遺症を負った場合、将来にわたって近親者若しくはプロの介護者が、交通事故の被害者を介護する必要がある場合があります。
後遺症として、後遺障害等級2級相当の高次脳機能障害が残存した事案において、将来の付添介護費として、約9400万円が認められました(名古屋地裁平成16年(ワ)第413号)。
当該事案において、被害者である原告は23歳の男子で、原告の父親が仕事を辞めて原告の介護にあたっています。
原告は事故後、自発性が欠如し、適切な促しがなければ、食事、更衣等の日常生活に必要な動作を行うことができず、また記憶障害により自分のしたことをすぐに忘れ、火事等の重大な事態を招く危険性が高いことから、常時介護が必要でした。
このような事案において、裁判所は、介護費用について、原告の症状、原告に対する介護状況、原告父の年齢等の諸事情から、介護方法につき原告の余命終期である53年間を下記のとおり、大きく3つに分けて検討し判示しました。
① 症状固定時の平成14年8月8日から口頭弁論終結後の平成18年8月7日までの4年間
原告父のみによる介護費用として、日額7000円
② 口頭弁論終結後の平成18年8月8日から原告父が67歳に達する平成25年8月7日までの7年間
職業介護人と原告父による介護費として、日額1万5000円
(1日当たり10時間の職業介護人による介護が必要として、職業介護人にかかる費用の基準額の7割相当額1万3000円に加え、近親者介護費用として日額2000円とした。)
③ 原告父が68歳を過ぎた平成25年8月8日から原告の平均余命である平成67年までの42年間
職業介護人のみによる介護費として、1万7000円
上記のとおり介護費用の日額を算定し、中間利息控除も検討の上、合計金9357万3346円を相当と判示しました。
将来の介護(看護)は、被害者だけではなくその近親者の将来の生活の在り方を左右するものです。また、実際の介護には莫大な費用が必要となりますので、妥協せず訴訟等を行ってでも勝ち取るべきです。
次回は、高次脳機能障害等併合2級の労働能力喪失率について、書こうと思います。