季節の変わり目に入り、涼しい風の吹く日と、暑い日差しの日が繰り返しています。
 気温の変化が激しいので、皆様体調には気を付けてお過ごしください。

 さて、今回は、交通事故で外傷性頸部症候群(頸椎捻挫、頸部挫傷etc)、すなわち、いわゆる「むちうち症」と診断され、最終的に後遺障害等級14級や12級が取得できた場合の、労働能力喪失期間の制限についてお話しします。

 後遺障害が残った場合、その解決は金銭でするしかありません。その際、「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」の2点を請求できるのが一般的です。

 「逸失利益」とは、要するに「障害が残ったことにより本来得られるはずであった利益を得られなかった」点をもって損害と把握し、その損害を金銭に評価した金額のことをいいます。

 基本的に、後遺障害による逸失利益は、例えば「通常であれば100%の力で仕事ができていたのに、後遺障害のせいで95%の力しか出せなくなり、5%分損をしている」という風に考え、それがX年間続く(基本的には67歳まで)ので、

 基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(に対応するライプニッツ係数)

によって算定します。

 この、労働能力喪失期間について、むち打ちでの14級だと5年程度、同じく12級だと10年程度に制限するのが裁判例の主流です。

 この期間制限はなぜ生じるのか。

 むち打ち損傷を原因とした神経症状は、後遺障害とはいえども、その障害が永続すると言い切れるものではありません。手や足を失った場合とは異なり、「いつか治る」と考えられているわけです。

 「いつか治る」のであれば、後遺障害じゃないのでは?という疑問がわきますが、まさにその通り。後遺障害ではないとして切り捨ててしまう方法もあるわけです。

 ですが、それでは実際に苦しんでいる被害者を救済することはできません。

 そこで、「後遺障害ではない」と切り捨てず、かつ、永続的に残るものでもない、という2つの点を調和させるための手法として、「労働能力喪失期間をいじる」という方法で対応しているものと考えられます。

 そこには、最終的にはお金で解決せざるを得ない現実の状況を踏まえて、「損害額を妥当なものに調整する」という感覚が働いていないとは言えないでしょう。

 むち打ち症の場合の期間制限としては、統計的にも14級は5年12級は10年を原則として、例外的に短い期間が定められることがある、という状況です。

 例外に該当する確率は低いわけではありませんが、なぜ短くするのかの説明は求めて問題ないでしょう。

 特に事情もなく、保険会社から、「喪失期間を3年として」などと説明された際には、弁護士への相談をお薦めします。

弁護士 水野太樹