交通事故紛争の裁判外の紛争解決について
1 交通事故による損害賠償に関する裁判外紛争解決機関は、強制保険である自賠責保険と任意保険の二重構造であるため、カバーしている紛争の対象が主に自賠責保険の支払をめぐる紛争か、加入している保険の種類によって互いに重複する部分も存在するが、それぞれ守備範囲が異なります。
今回は、前者の自賠責保険の支払をめぐる紛争についてお話したいと思います。
2 自賠責紛争処理機関について
自賠責保険の支払に関する問題、特に有無責の認定、過失割合の判定や後遺障害の等級認定などについては、自動車保険料率算定会(自算会)の調査事務所が調査していました。1998年に、死亡事故や傷害事故で被害者が意識不明等の状態の為事故状況を説明できない場合で保険金が支払われないか、減額される可能性がある事案、あるいおは後遺障害の等級認定に係る請求事案(特定事案)について、自算会の内部に設置した自賠責保険有無責等審査会または自賠責保険後遺障審査会で慎重に審査していました。
財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構(自賠責紛争処理機関)は自算会の審査会とは別個独立に公正中立な第三者機関として新たに設けられた機関です。主たる事務所を東京に従たる事務所を大阪においています。手続き費用としては原則無料、自賠責紛争処理機構が負担しています。
3 事件の対象・申立について
事件の対象は、直ちに申立をするというよりは、保険金請求者がまず自賠責保険における第一次審査を原則的に行うようにすすめられています。
後遺障害の等級認定、重過失減額の割合、休業損害、逸失利益などの 事実認定に係る事案に関しては、損害保険料率算出機構自賠責損害賠償センターの本部・地区本部に分かれて審査が行われます。第一次審査については、当事者は異議申し立てをすることができ、異議がなされれば特定事案として同機構本部の自賠責保険審査会で第二次審査が行われます。そして、第二次審査に対して、当事者が紛争処理申請した場合に、自賠責紛争処理機構が調停を行うのが原則となります。
紛争処理委員は、弁護士、医師、法学、交通工学等の学識経験者といった専門的知見を有するものです。(多分野の専門家による迅速かつ的確な処理を行うため、紛争処理委員は30名以上確保する必要があり、理事長が事件ごとに指名する3名以上の担当紛争処理委員が紛争処理を実施します。担当委員は少なくとも一人は弁護士でなければならなりません。)
4 手続きの概要
手続きの概要としましては、当事者から提出された資料のほか、自賠責紛争処理機構からの請求に応じてなされた、保険会社からの説明または提出書類、自賠責紛争処理機構が独自に収集した資料に基づいて行われます。
紛争処理による結果は、被害者側は受け入れるか否かを自らの意思で選択することができますが、自賠責保険会社などは片面的に遵守することになします。任意保険会社側が自賠責保険などの支払金を含めて交渉している場合(一括払制度)には、自賠責部分について遵守しなければなりません。