算出基準1(基礎収入)
では、主婦休損については、基礎収入はどのように考えるのでしょうか。給与所得者や自営業者とは異なり、家事労働は現実に金銭に換算されていたわけではないので、まず、この点が問題となります。
この点については、一般に、賃金構造基本統計調査(いわゆる賃金センサス。厚労省が行った賃金の調査のこと。)の平均年収が採用されています。原則として、平均年収のうち、事故発生年の女性・全学歴計・全年齢の平均賃金が基準とされます。最新の平成28年分の賃金センサスでは、女性・全学歴計・全年齢の平均賃金は、376万2300円となっています。よって、平成28年に事故に遭われたのであれば、日額約1万0307円(376万2300円÷365日)となります。
なお、加害者側損害保険会社からは、当初、自賠責保険の休業損害日額(日額5700円)を主婦休損の基礎収入と主張されることが多く、注意が必要です。
算出基準2(休業日数)
次に、休業日数をどのように考えるべきでしょうか。この点も、給与所得者や自営業者であれば休業日数が明確であることが多いのに対し、主婦・主夫の場合には、休業日数が明確でないことが多く、問題となります。怪我をされた状態であっても、不完全なりとも家事をされることは多く、休業日数の算定が困難なためです。
一つの考え方として、通院実日数(治療終了までに、実際に通院した日数)を休業日数と考える方法があります。少なくとも、通院した日については、通院のために、家事は相当制限されたはずですので、ある程度合理的な方法ではあります。もっとも、通院した日に全く家事ができなかったとは限らず、また、通院していない日の家事も制限されていた可能性があり、やや大雑把な方法という見方もできます。
もう一つの考え方として、怪我の治り具合により、期間ごとに家事労働が制限された割合を見積もっていく方法があります(逓減法(ていげんほう))。
例えば、「事故後1ヶ月は全く家事ができなかったとして100%、事故後2ヶ月目から3ヶ月目はある程度家事ができるようになったから50%、事故後4ヶ月目から6ヶ月目まではだいぶ家事ができるようになったから20%。」というふうに考えるのです。この方法によれば、通院実日数ベースの考え方よりは、よりきめ細かく算定していくことはできます。
もっとも、詰めて考える方法であるだけに、加害者側と、「各時期、どれほどの割合が制限されていたのか」といった点で水掛け論になってしまう危険もあります。実日数ベースであれば、必ずしもこのような危険はありません。
以上のように、どちらの方法が優れているとも、言い切れません。
最後に
主婦休損については、算定の仕方で大きく金額が変わることが多く、相手方損害保険会社から提示された金額が、裁判基準と比べて極端に低額であることがあります。
また、上記のように、算定の仕方で大きく金額が変わることが多いために、加害者側と金額を巡って鋭く対立することがあります。
「加害者側から提案された主婦休損が低額すぎるのではないか」、「主婦休損について加害者側と話し合ってみたが、なかなかうまく交渉できない」などの場合、お力になれるかもしれませんので、是非弁護士にご相談ください。